3.ソルバー操作の注意点

以上の関係を基にソルバー機能を用いて、解を求める。データはCnhごとに1列で入力する。ソルバーの実施において、「変数セル」には、主要成分を用いると収束しやすい。ここでは、変数としてpH, pNH3( =log[NH3])を採用する。ソルバーのパラメータのダイアログで「制約条件の精度」は、原則1e-10とする。また、「制約のない変数を非負数にする」のチェックは外す。

 

沈殿生成の有無にかかわらず全操作で共通なのは、

目的セル:Q=0

変数セル: pH, pNH3

制約条件:R=0

 

3.1 沈殿が生成しない場合(アンモニアの添加濃度Cnhが非常に高いとき)

この場合、沈殿が生成しないので、[Cu] = Ccu/αが成立する。また、Cu(NH3)4^2+が主成分と考えると、Cnhが大過剰のときは近似的に、[NH3]Cnh [H](KwKn/Cnh)が成立すると考えられる。

銅イオン濃度を[Cu] = Ccu/αとする。

1列目では、Cnhが大過剰量の条件(たとえば、Cnh=10, Ccu = 0.1)からはじめて、初期値に、pH12p, NH3=-1を入れてソルバーを実行する(-13)

2列目以降は、前列の結果をコピーして、Cnhを少しずつ減らしてソルバーを実行する。

ソルバーの実施後、[Cu][OH]^2/Ksp1であることを確認する。この値が1より大きくなった時点でこの操作を一旦中断する。

 

境界(上限)における取り扱い

[Cu][OH]^2/Ksp1になった列において、「制約条件」に[Cu][OH]^2/Ksp=1を追加し、「変数セル」をCnh,pH, pNH3にしてソルバーを実行し、境界(上限)におけるCnhを求める。

 

3.2 沈殿が生成する場合

この場合は、[Cu] = Ksp/[OH]^2が成立する。

銅イオン濃度を[Cu] = Ksp/[OH]^2に変更してソルバーを実行する。

[Cu’]0.1の確認:[Cu’]0.1になったら、この操作を一旦中断する。

 

境界(下限)における取り扱い:

[Cu’]0.1になった列において、[Cu] = Ccu/αに変更し、「制約条件」に[Cu][OH]^2/Ksp=1を追加し、「変数セル」をCnh, pH, pNH3にしてソルバーを実行し、境界(下限)におけるCnhを求める。

 

3.3 沈殿が生成しない場合(Cnhが非常に低いとき)

アンモニアの添加量が非常に少ない場合は、沈殿は生成しない。[Cu’]0.1になったら、沈殿が生成しない領域となり、[Cu]Ccu/αが成立する。3.1と同様の操作を行う。

 

4.ソルバー操作の一例

「沈殿が生成しない場合(アンモニアの添加濃度Cnhが非常に高いとき)」について、Ccu = 0.1, Cnh=10の場合(D)を例にして、ソルバーの操作を説明する。

目標セルをQ=0、制約条件をR=0、変数をpHおよびpNH3とする。

1)ソルバーを立ち上げる。[データ]→[ソルバー]

2)B4B13logKsp, logβo1,logβo2, logβo3,logβo4, logβn1,logβn2, logβn3, logβn4,logKnの値を入れる。

3)D4D13Ksp, βo1o2, βo3, βo4n1, βn2, βn3n4, Knの計算式を入れる(-1)

4)Ccu,Cnhの値を入れる。(D14, D15)

  *Ccu は一定値(0.1mol/L)とする。Cnh1010^-4 mol/Lと変化させる。

5)変数セル(pH, pNH3)に初期値を入れる(-2)(D16, D17)

  *初期値はできるだけ答えに近い値とする。Ccl=10の場合、たとえばpH=12, p NH3=-1とする。

6)α値および個々の化学種濃度の計算式を入れる(-1)(D20D34)

  *この場合、沈殿は生じないので、[Cu] = Ccu/αを用いる。

7)Q(目的セル), R(制約条件), [Cu][OH]^2, [Cu][OH]^2,Kspの計算式を入れる(-1)(D35D39)

8)ソルバー解を求める。

 ・[目的セル:“D35”]→[指定値:“0”]→[変数セル:“D16:D17”]→[制約条件の対象:追加”]→[セル参照:36”]→[=]→[制約条件:“0”]→[OK]→[非負数のチェックを外す]→[解決方法の選択:“GRG非線形”]→[オプション]→[精度:“1e-10”]→[OK]→[解決]

  *D16, D17に求める解が出る(-3)

*以下、Cnhの値を変えて、同様の操作を行う。

 ・D列をコピーしてE列に貼り付ける。

 ・Ccl5に変える。(E15)

 ・D列と同様にE列についてソルバー解を求める。

 ・以下同様に、F列、Gと繰り返す。

 ・[Cu][OH]^2/Kspを確認し、1を超えた段階で計算を一旦止める。

*さらに、「境界(上限)」「沈殿が生成する場合」「境界(下限)」「沈殿が生成しない場合(Cnhが非常に低いとき)」について同様の操作を続ける。

 

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