(2019/08/11)は「CaCl2溶液にNa2CO3を加える」ことを考えましたが、今回はCaCl2溶液に(NH4)2CO3を添加することを考えます。またNH3の添加の効果について調べます。
CaCl2, (NH4)2CO3, NH3の添加濃度をそれぞれ、Cca, Cx, Cn (mol/L)とします。
用いた平衡定数(25℃)は(2019/08/11)の通りです。
アンモニウムイオンの酸解離定数は、pKn = 9.37 とします。
(NH4)2CO3, NH3の添加による溶液の体積変化は無視します。また、活量係数はすべて1とし、CO2の気相との平衡は考えないこととします。
<関係式>
●物質バランス
[Ca’] = [Ca]+[CaOH]+[CaCO3]+[CaHCO3]
= [Ca](1+βo[OH]+βc[CO3]+βh[HCO3]) = [Ca]α
[CO3’] = [CO2]+[HCO3]+[CO3]+[CaCO3]+[CaHCO3]
[NH3’] = [NH3]+[NH4]
Cca-[Ca’] = Cx-[CO3’]
●電荷バランス
Q = [H]-[OH]+2[Ca]+[CaOH]+[CaHCO3]-[HCO3]-2[CO3]+[NH4]-[Cl] = 0
●各化学種の濃度
[H] = 10^-pH
[OH] =10^-14/[H]
[Ca] = Ksp/[CO3] (沈殿のあるとき)
または、[Ca] = Cca/α (沈殿のないとき)
[CaOH] =βo[Ca][OH]
[CaCO3] = βc[Ca][CO3]
[CaHCO3] = βh[Ca][HCO3]
[CO3] = 10^-pCO3
[HCO3] = [CO3][H]/K2
[CO2] = [HCO3][H]/K1
[Cl] =2Cca
[NH3] = (2Cx+Cn)/(1+[H]/Kn)
[NH4] = [H][NH3]/Kn
<エクセルの取り扱い>
●エクセルでのソルバーのパラメータ
・目的セル:電荷バランス、Q = 0
・変数セル:pH, pCO3
・制約条件:R = Cca-Cx-([Ca’]-[CO3’]) = 0
●沈殿の生成・消滅の境界におけるパラメータ
・目的セル:電荷バランスQ = 0
・変数セル:pH, pCO3 およびCx
・制約条件:R = 0, および [Ca][CO3]/Ksp = 1
・[Ca]の計算式:[Ca] = Cca/α
<結果>
結果は次の通りです。
CaCl2およびNH3の濃度がそれぞれ、Cca = 0.01mol/L, Cn =0, 0.2, 1 mol/L の溶液に(NH4)2CO3を添加したときの溶解度を図-1に示します。また、比較のため(NH4)2CO3の代わりにNa2CO3を添加したときの溶解度を図-2に示します。
図から分かるように、(NH4)2CO3を過剰に加えると溶解度は減少し、沈殿は完全になっていくことが分かります。しかし、(NH4)2CO3とNa2CO3を比べると、(NH4)2CO3の方が溶解度の減少が緩やかです。これはおなじ濃度でもpHの違いでNa2CO3より(NH4)2CO3の方がCO32-の生成率が悪いためです。(NH4)2CO3にNH3を共存させると、この欠点を解消することができます。
図-1
図-2
計算例を図-3に示します。
図-3
コメント