水酸化アルミニウムの沈殿は生成条件の違いによっていくつかの結晶形があり、それぞれ溶解度積(Ksp)が異なります。結晶形の違いによる溶解度の変化の様子を調べます。
アルミニウム塩の溶液に常温でアルカリを添加すると直後、主に無定形(アモルファス)の沈殿が得られます。これを熟成すると条件によって一部、ベーマイト、バイヤライト、ギブサイトに変化します。
また、アルミン酸塩溶液を加水分解すると、通常主にギブサイトが生成し、条件によってはバイヤライト、ベーマイトが生成します。
また、天然にはダイアスポア、ベーマイト、ギブサイト等が産出されます。
各結晶形の溶解度積(Ksp, at 25℃, μ=0)は次の通りです。
・無定形: pKsp = 32.3
・ダイアスポア: pKsp = 33.5
・ベーマイト: pKsp = 34.0
・バイヤライト: pKsp = 35.6
・ギブサイト: pKsp = 36.3
また、アルミニウムの水酸化物錯体の生成定数(βn, at 25℃, μ=0)は、
・β1 = [AlOH]/([Al][OH]) logβ1 = 9.0
・β2 = [Al(OH)2]/([Al][OH]^2) logβ2 = 17.9
・β3 = [Al(OH)3]/([Al][OH]^3) logβ3 = 25.2
・β4 = [Al(OH)4]/([Al][OH]^4) logβ4 = 33.3
関係式は次の通り。
Ksp = [Al][OH]^3
βn = [Al(OH)n]/([Al][OH]^n)
α=1+β1[OH]+β2[OH]^2+β3[OH]^3+β4[OH]^4
Ksp'= Kspα
S = Ksp'/[OH]^3
logS = logKsp+logα+3pOH = logKsp'+3pOH
前回(2020-01-19)通りのやり方で、pHと溶解度の関係を求めました*。結果を図-1~図-3に示します。結晶形の違いによって溶解度は大きく異なることが分かります。
*イオン強度の影響や多核錯体の生成は、ここでは無視する(別途考察する予定)。
図-1
図-2
図-3
図-2のTable-3は結晶形ごとのpH-溶解度の関係を示した表ですが、この表の作成にはExcelで「What-If分析」の「データテーブル」機能を用いると便利です。
<データテーブル(Table-3)の作成方法>
(1) “I16”に”G17”(pH=1のときのlog S)をコピー&ペースト
(2) 作成するデータテーブルの範囲を指定(”I16:N36”)
(3) データテーブルの作成
・メニューバー:「データ」
・ツールバー:「What-If分析」⇒「データテーブル」⇒「データテーブル」ダイアログが出る⇒「行の代入セル」に”D15” (logKsp)を指定 ⇒「列の代入セル」に”B17” (pH)を指定⇒「OK」
コメント