滴定曲線、溶解度などーエクセルを用いて

酸塩基反応、沈殿反応、錯生成反応などの溶液内イオン平衡についてエクセル(EXCEL)を用いて理論的に解析し、滴定曲線の作成や溶解度の計算などをしていきたいと思います。

カテゴリ: 酸塩基平衡

滴定剤用のNaOH溶液を調製するにあたっては、できる限り炭酸塩を含まないような調製法をとる必要があります。また滴定剤の保存および使用においても大気中のCO2との接触をできるだけ避ける工夫が必要です*1)。今回は、CO2で汚染したNaOHを滴定剤として用いた場合の滴定曲線と滴定誤差について調べます。   

*1) NaOHは固体・溶液に限らず大気中のCO2を吸収して炭酸塩で汚染される危険性を持っている。JIS等に記載されている滴定剤用のNaOH溶液の調製・標定方法は次の通り:
「使用する水は、煮沸して溶存気体及び二酸化炭素を除去した後、ソーダ石灰を詰めた二酸化炭素吸収管を接続して保存する。CO2を含まないNaOH溶液を作るためには、市販のNaOH試薬に含まれるNa2CO3(試薬の保管中に空気中のCO2を吸収する場合もある)を除くため、まずNaOH濃度約50%の濃厚水溶液を作り数日放置してNa2CO3を沈降させる(NaOHの濃厚水溶液にNa2CO3は不溶)。目的濃度のNaOH溶液を作るには、放置した濃厚水溶液の上澄み液を取り、二酸化炭素を除去した水で適宜希釈する。作ったNaOH溶液はソーダ石灰を詰めた二酸化炭素吸収管を接続して保存する。標準物質としてアミド硫酸を用いブロモチモールブルー溶液を指示薬として標定する。」   

<滴定曲線>
標定後空気中のCO2を吸収したNaOH溶液を滴定剤として用いて塩酸を滴定した場合の滴定曲線を求めます。   

エクセルで滴定曲線を描く場合、「二分法」(2019/03/08)、「レビ法」(2019/03/12)などいくつかのやり方があります。二分法は滴下量を与えてpHを求める方法、レビ法はpHを与えて滴下量を求める方法です。レビ法を用いる場合は、pHの関数として滴下量の式(滴定曲線の式)を求める必要があります。   

Cco mol/LCO2を含んだCbo mol/LNaOHを滴定剤として用い、Cao mol/LHCl, Va mLを滴定する場合の滴定曲線の式(滴下量: Vb mL)は次式で与えられます(2021/04/18)

Vb = Va(CaoΔ)/(Cbo(2f0f1)CcoΔ)
ここで、Δ=[H][OH]
f0 = [CO3]/Cc = 1/(1[H]/K2[H]^2/(K2K1))
f1 = [HCO3]/Cc = f0[H]/K2   

Va/Vb(横軸)に対するpH(縦軸)の滴定曲線を描く場合は、
Vb/Va = (CaoΔ)/(Cbo-(2f0+f1)CcoΔ)
となります。   

例題1  (1) 0 , (2) 1×10^-5 , (3) 3×10^-5 , (4) 1×10^-4 , (5) 3×10^-4 mol/LCO2を含む0.01 mol/L NaOH溶液を滴定剤として用いて、0.01 mol/LHClを滴定したときの滴定曲線と当量点のpH
エクセルを用いてレビ法Va/Vb(横軸)に対するpH(縦軸)の滴定曲線を描くこととする。
① あるCO2濃度(Cco mol/L)およびpHについて、次式をもちいてVb/Vaを計算する(-1C)
Vb
/Va = (CaoΔ)/(Cbo-(2f0+f1)CcoΔ)
② What-If分析のデータテーブル機能によってCcoおよびpHを変化させたときの複入力データテーブルを作成し、Vb/Vaを求める(-1FK)
③ データテーブルにおいてソルバー機能を用いて各CcoにおいてVb/Va=1となるようなpHを求める。このpHが当量点となる。
④ データテーブルを変形してVb/Vaに対するpHの値の表を作る(-1MR)
⑤ ④の表(MR)から範囲を指定して散布図を作り、滴定曲線を描く。

計算結果および滴定曲線を-1-(拡大図)に示す。

図-1
2021-06-13-fig1

-
2021-06-13-fig2

-1~2から明らかなように、滴定剤(NaOH)CO2が微量でも混入すると、当量点のpHが7から56くらいまで低下することがわかる。

<滴定誤差>
Cco mol/LCO2を含むCbo mol/LNaOHを滴定剤として用い、Cao mol/LHCl, Va mLを滴定する場合の滴定率をφ = CboVb/(CaoVa)とすると、滴定誤差(E=φend1)
E =
φend1= (Cbo/Cao)(Cao
Δend)/(Cbo(2f0f1)CcoΔend)1
となります(2021/05/02)。   

例題2 例1におけるpH滴定誤差との関係は? また、例1(2) (Cco = 1×10^-5 mol/L)において指示薬としてブロモチモールブルー(pHend=6.5とする)またはフェノールフタレイン(pHend=8.5とする)を用いた場合の滴定誤差は?
エクセルを用いてpHに対する滴定誤差E%を求める。
① あるCO2濃度(Cco mol/L)およびpHについて、
E =
φend1= (Cbo/Cao)(Cao
Δend)/(Cbo(2f0f1)CcoΔend)1
をもちいてE%を計算する(-3C)
② 
What-If分析のデータテーブル機能によってCcoおよびpHを変化させたときの複入力データテーブルを作成し、E%を求める(-3FK)

③ データテーブルにおいてソルバー機能を用いて各CcoにおいてE%=0となるようなpHを求める。このpHが当量点となる。
④ ③のデータテーブルから範囲を指定して散布図を作り、滴定曲線を描く。

計算結果およびpHと滴定誤差E%の関係を-3に示す。

-
2021-06-13-fig3

-から指示薬としてブロモチモールブルー(pHend=6.5)を用いたときの滴定誤差は、+0.053%、フェノールフタレイン(pHend=8.5)を用いたときの滴定誤差は、+0.16%となる。
二酸化炭素による滴定誤差を小さくするためには、指示薬としてフェノールフタレインよりもブロモチモールブルーを用いた方がよい。   

<滴定曲線と二酸化炭素化学種の分布>
例題3 2×10^-3 mol/LCO2を含む0.01 mol/L NaOH溶液を滴定剤として用いて、0.01 mol/LHCl, 10 mLを滴定したときの滴定曲線とCO2の化学種分布は
ここでは二分法を用いた。滴下量Vb mLに対応するpH[CO3], [HCO3], [CO2]を求め、滴定曲線およびCO2の全濃度と化学種分布図を描く。結果を-4、-図5に示す。   

-
2021-06-13-fig4

-
2021-06-13-fig5

当然のことであるが、滴下量Vbの増加とともにCO2の全濃度は増加し、またpHの変化とともにCO2の化学種分布は変化する。   

これまで(2021/05/02, 2021/05/09)に引き続き滴定誤差について考察します。今回は弱酸の混合物の滴定における滴定誤差についてです。   

1価の弱酸(HX, HY)の混合物
Cxo
mol/Lの1価弱酸(HX, 酸解離定数Kx)およびCyo mol/Lの1価弱酸(HY, 酸解離定数Ky)を含むVa mLの混合酸をCbo mol/LNaOHで滴定する場合(滴下量:Vb mL)、を考えます。このとき、滴定曲線は次式で与えられます(2021/04/25)
Vb = Va(Cxofx0Cyofy0Δ)/(CboΔ)
ここで、Δ=[H][OH]
fx0 = [X]/Cx = 1/(1[H]/Kx)
fy0 = [Y]/Cy = 1/(1[H]/Ky)   

ここで、KxKyとすると、滴定曲線において最初「(HXX)の終点」(第1終点)が現れ、次いで「(HXHYXY)の終点」(第2終点)が現れます(*1)
(*1) Kx, Ky相互の大きさ次第で明確な終点を示さない場合もある。
HXの滴定率(φ1)を、
φ1 = CboVb/(CxoVa)
HX
HYの滴定率(φ2)を、
φ2 = CboVb/((CxoCyo)Va)
とすると、
φ1 = (Cbo/Cxo)(Cxofx0Cyofy0Δ)/(CboΔ)
φ2 = (Cbo/(CxoCyo))(Cxofx0Cyofy0Δ)/(CboΔ)   

したがって、第1終点の滴定誤差(E1)は、
E1 =
φend11= (Cbo/Cxo)(Cxofx0Cyofy0
Δend1)/(CboΔend1)1 …①
第2終点の滴定誤差(E2)は、
E2 =
φend21= (Cbo/(CxoCyo))(Cxofx0
Cyofy0Δend2)/(CboΔend2)1 …②
となります(*2)
(*2) 第1当量点では、VaCxo = Veq1Cbo
第1終点では、
Vend1 = Va(Cxofx0Cyofy0Δend1)/(CboΔend1)
したがって第1終点の滴定誤差(E1)は、
E1 = (Vend1
Veq1)/Veq1 = Vend1/Veq11
 = {Va
(Cxofx0Cyofy0Δend1)/(CboΔend1)}/(VaCxo/Cbo)1
 = (
Cbo/Cxo)(Cxofx0Cyofy0Δend1)/(CboΔend1)1
第2当量点では、Va(CxoCyo)= Veq2Cbo
第2終点では、
Vend2 = Va(Cxofx0Cyofy0Δend2)/(CboΔend2)
したがって第2終点の滴定誤差(E2)は、
E2 = (Vend2
Veq2)/Veq2 = Vend2/Veq21
 = {Va
(Cxofx0Cyofy0Δend2)/(CboΔend2)}/{Va(CxoCyo)/Cbo}1
 = (
Cbo/(CxoCyo))(Cxofx0Cyofy0Δend2)/(CboΔend2)

例題1 0.01 mol/L 酢酸および(1) 0 (2) 0.0001 (3) 0.001 (4) 0.01 mol/L ホウ酸(pKa=9.24)を含む混合溶液を0.01 mol/L NaOHによって滴定するとき、pHと酢酸の滴定誤差の関係は? 
①式および②式について、計算列(1エクセル表のC)においてpH2におけるE1%を求め、次いでデータテーブル機能を用いてpH212と変化させたときのE1%を求めた。計算結果およびpHE1%の関係を-に示す。

-
2021-05-16-fig1

例題2 例題1において 酢酸の終点(第1終点)が当量点から±0.3 pH以内であるときの滴定誤差(E%)は?
例題1で求めたE1%について、pH, Cyoに関するデータテーブル(F4:J19)を作り、各ホウ酸濃度(Cyo)においてソルバー機能を用いてE1%=0となるpHを求め(pHeq)pHend (=pHeq±0.3)におけるE1%を求めた。結果を-2に示す。ホウ酸濃度(Cyo)が高くなると酢酸の滴定誤差が大きくなることが分かる。たとえば、ホウ酸を含まないときはE%は±0.05%であるが、ホウ酸0.001 mol/Lを含むと、±0.27%となる。

-
2021-05-16-fig2

1価の弱酸(HX)2価の弱酸(H2Y)の混合物
Cxo mol/Lの1価弱酸(HX, 酸解離定数Kx)およびCyo mol/Lの2価弱酸(HY, 酸解離定数 Ky1, Ky2)を含むVa mLの混合酸をCbo mol/LNaOHで滴定する場合(滴下量:Vb mL)、を考えます。このとき、滴定曲線は次式で与えられます(2021/04/25)
Vb = Va(Cxofx0Cyo(2f y0f y1)Δ)/(CboΔ)
ここで、Δ=[H][OH]
fx0 = [X]/Cx = 1/(1[H]/Kx)
fy0 = [Y]/Cy = 1/(1[H]/Ky2[H]^2/(Ky2Ky1))
fy1 = [HY]/Cy = fy0[H]/Ky2

ここで、KxKy1Ky2とすると、滴定曲線において最初「(HXX)の終点」(第1終点)が現れ、次いで「(HXH2YXHY)の終点」(第2終点)が現れ、三番目に「(HXH2YXY)の終点」(3終点)が現れます(*3)
(*3) もちろん、Kx, Ky1, Ky2相互の大きさ次第で明確な終点を示さない場合もある。

第1終点の滴定誤差(E1)は、
E1 =
φend11= (Cbo/Cxo)(Cxofx0Cyo(2fy0fy1)
Δend1)/(CboΔend1)1 …③
第2終点の滴定誤差(E2)は、
E2 =
φend21= (Cbo/(CxoCyo))(Cxofx0
Cyo(2fy0fy1)Δend2)/(CboΔend2)1 …④
第3終点の滴定誤差(E2)は、
E3 =
φend31= (Cbo/(Cxo2Cyo))(Cxofx0
Cyo(2fy0fy1)Δend3)/(CboΔend3)1 …⑤
となります(*4)
(*4) Kx, Ky1, Ky2の大きさの順番が変わるとE1, E2, E3の式も変わる。
A=(Cxofx0Cyo(2fy0fy1)Δend)/(CboΔend)とすると、
Ky1>Kx>Ky2
ならば、E1=(Cbo/Cyo)A1;  E2=(Cbo/(CyoCxo))A1;  E3=(Cbo/(2CyoCxo))A1

Ky1>Ky2>Kxならば、E1=(Cbo/Cyo)A1;  E2=(Cbo/(2Cyo))A1;  E3=(Cbo/(2CyoCxo))A1
となる。

例題3 0.01 mol/L フッ化水素酸(Ka=3.17)および(1) 0, (2) 5×10^-5, (3) 1×10^-4, (4) 2×10^-4  mol/L 炭酸(pK1=6.35, pK2=10.33)の混合溶液を0.01 mol/L NaOHによって滴定するとき、pHとフッ化水素酸の滴定誤差の関係は? 

③~⑤式について、計算列(1エクセル表のC)においてpH2におけるE1%を求め、次いでデータテーブル機能を用いてpH212と変化させたときのE1%を求めた。計算結果およびpHE1%の関係を-3に示す。炭酸濃度(Cyo)が高くなるとフッ化水素酸の滴定誤差が大きくなる。

-3
2021-05-16-fig3

例題4 例題3(1), (3)において、フッ化水素酸の終点(pHend)が当量点(pHeq)から±0.3 pH以内であるときの滴定誤差(E%)は?
-3のエクセルシートのデータテーブルにおいて、
① ソルバーでE1% = 0となるようなpHを求め、このpHpHeqとする。
② pHeqから±0.3 pHだけ離れたpHを求め、このpHpHendとする。
③ pHendからE1%を求める。
結果を-に示す。

(
)
 炭酸を含まないとき:E% =0.009%~+0.009%
 炭酸濃度1×10^-4 mol/Lのとき:E% =0.034%~+0.027%

-
2021-05-16-fig4

先々週(2021/05/02)、先週(2021/05/09)、今週と「滴定誤差」について考察しましたが、これは検出方法等に伴う系統的誤差に限定したものです。実際の滴定では、このような誤差以外にも様々な誤差が含まれるので、総合的な見地からの誤差の検討が必要です。

前回(2021/05/02)に続いて、今回は多価の酸・塩基の滴定における滴定誤差について考察します。   

<2価弱酸の滴定における滴定誤差>
Cao mol/Lの2価の弱酸(H2A, 酸解離定数: K1, K2)Cbo mol/LNaOH滴定する場合、滴定曲線の式は次式で与えられます(2021/04/18)
Vb = Va(Cao(2f0f1)Δ)/(CboΔ)
ここで、Δ=[H][OH]
f0 = [A]/Ca = 1/(1[H]/K2[H]^2/(K2K1))
f1 = [HA]/Ca = f0[H]/K2   

一方、滴定誤差(E)は、次式で与えられます。
E = (VendVeq)/Veq = Vend/Veq1
第1当量点ではCaoVa=CboVeqなので、第1終点の滴定誤差(E1)は、
E1 = (Cbo/Cao)(Cao(2f0
f1)Δend1)/(CboΔend1)1 …①
同様に、第2当量点では2CaoVa=CboVeqなので、第2終点の滴定誤差(E2)は、
E2 = (Cbo/(2Cao))(Cao(2f0
f1)Δend2)/(CboΔend2)1 …②
となります(*1)
(*1)
第1当量点では、VaCao = Veq1Cbo
第1終点では、 Vend1 = Va(Cao(2f0f1)Δend1)/(CboΔend1)
したがって、第1終点の滴定誤差(E1)は、
E1 = (Vend1-Veq1/Veq1 = Vend1/Veq1-1
 = {Va(Cao(2f0+f1)-Δend1)/(CboΔend1)}/(VaCao/Cbo)-1
 = (Cbo/Cao)(Cao(2f0+f1)-Δend1)/(CboΔend1)-1

第2当量点では、2VaCao = Veq2Cbo
第2終点では、 Vend2 = Va(Cao(2f0f1)Δend2)/(CboΔend2)
したがって、第2終点の滴定誤差(E2)は、
E2 = (Vend2-Veq2)/Veq2 = Vend2/Veq2-1
 = {Va(Cao(2f0+f1)-Δend2)/(CboΔend2)}/{2VaCao/Cbo}-1
 = (Cbo/(2Cao))(Cao(2f0+f1)-Δend2)/(CboΔend2)-1

例題1  0.1 mol/Lマレイン酸(pK1=1.92, pK2=6.27)0.1 mol/L NaOHで滴定するときのpHと滴定誤差の関係は?
①式および②式について、計算列(1エクセル表のC)においてpH2におけるE1%, E2%を求め、次いでデータテーブル機能を用いてpH212と変化させたときのE1%, E2%を求めた。計算結果およびpHE%の関係を-に示す。マレイン酸は、第1終点、第2終点ともに検出できるが、滴定誤差は第2終点の方が小さい。

-
2021-05-09-fig1-a

<炭酸ナトリウムの滴定における滴定誤差>
Cbo mol/Lの炭酸ナトリウム(Na2CO3,酸解離定数: K1, K2)Cao mol/L塩酸で滴定する場合の滴定曲線式は次式で与えられます(2021/04/18)
 Va = Vb(Cbo(22f0f1)Δ)/(CaoΔ)
ここで、Δ=[H][OH]
 f0 = [CO3]/Cb = 1/(1[H]/K2[H]^2/(K2K1))
 f1 = [HCO3]/Cb = f0[H]/K2   

一方、滴定誤差(E)は、次式で与えられます。
E = (VendVeq)/Veq = Vend/Veq1
第1当量点ではCaoVeq=CboVbなので、第1終点の滴定誤差(E1)は、
E1 = (Cao/Cbo)(Cbo(
22f0f1)Δend1)/(CaoΔend1)1 …③
同様に、第2当量点ではCaoVeq=2CboVbなので、第2終点の滴定誤差(E2)は、
E2 = (Cao/(2Cbo)(Cbo(
22f0f1)Δend2)/(CaoΔend2)1 …④   

例題2 0.1 mol/L炭酸ナトリウム(pK1=6.35, pK2=10.33)0.1 mol/L NaOHで滴定するときのpHと滴定誤差の関係は? 第1終点としてフェノールフタレイン(pHend=8.5とする)を用いたときの滴定誤差は? また第2終点としてメチルオレンジ(pHend=4.1とする)を用いたときの滴定誤差は?
③式および④式について、計算列(3エクセル表のC)においてpH2におけるE%を求め、次いでデータテーブル機能を用いてpH212と変化させたときのE%を求めた。計算結果およびpHE%の関係を-に示す。

(
) 1終点: E1%= -0.76%   ,  第2終点: E2%= -0.16%   

-
2021-05-09-fig2-a

<リン酸の滴定における滴定誤差>
これまでの考察からも類推できるように、リン酸の第1終点および第2終点における滴定誤差は次式のようになります。
第1終点の滴定誤差(E1)は、
E1 = (Cbo/Cao)(Cao(3f0
2f1f2)Δend)/(CboΔend)1 …⑤
第2終点の滴定誤差(E2)は、
E2 = (Cbo/(2Cao))(Cao(3f0
2f1f2)Δend)/(CboΔend)1 …⑥   

例題3 0.1 mol/L NaOHによる0.1 mol/L リン酸(pK1=2.15, pK2=7.20, pK3=12.38)の滴定において、第1終点および第2終点がそれらの当量点から±0.3 pH以内であるときの滴定誤差(E%)は?
計算方法の基本的方針は次の通り。
(1)
第1, 第2当量点におけるpHを求める(pHeq1, pHeq2)
(2)
第1, 第2終点におけるpHを求める(pHend1, pHend2)
  pHend1 = pHeq1±0.3, pHend2 = pHeq2±0.3
(3)
⑤式および⑥式を用いて、pHend1, pHend2におけるE1%, E2%を求める。

エクセルでの計算方法はいろいろあるが、その一例を-に示す。
(1)
計算列(C)に必要なデータ(pK1, pK2, pK3, Cao, Cbo)を入れて、E1%, E2%を求める(pHは任意でよい、ここでは4)
(2)
データテーブルをつくる。
[C20](E1%)
[G4]にコピーする⇒範囲[G4:H15]を指定する⇒「データ」⇒「What-If分析」⇒「データテーブル」⇒「ダイアログボックス」(行の代入セル:[$C$9](Cao)、列の代入セル:[$C$11](pH) OK)H4=0.1, G5G15=4(とりあえず)
(3)
ソルバーでpHeq1を求める。
・「データ」⇒「ソルバー」⇒「ダイアログボックス」(目的セル:[$H$10](E1%)、指定値:0、変数セル:[$G$10](pHeq1
 ) ) OK

(4) pHend1を求める。
G5 = $G$10+F5
 ~ G15= $G$10+F15
(5) [H7]
[H13]が求める値

(6) E2%についても(2)(5)と同様の操作を行う。
(
)  E1% = 0.470.47%,   E2%  = 0.250.25%

-
2021-05-09-fig3

ここで検討している「滴定誤差」は検出方法等に伴う系統的誤差に限定したものです。実際の滴定では、測容器の誤差、試料中の不純物(たとえば大気からのCO2など)、滴定操作に伴う測定値のばらつきなど様々な誤差が含まれるので、総合的な見地からの誤差の検討が必要です。

酸塩基滴定の滴定誤差について考えます。滴定誤差は滴定で実験的に求めた終点が理論的な当量点に一致しないためにおこる誤差です。広義には滴定操作によるばらつきなどを含める場合もありますが、ここでは主に終点検出方法(たとえば、滴定指示薬による目視法)に原理的に伴う誤差(系統的誤差)を対象とします。

「滴定誤差(E)」を次のように定義します。 
E = (VendVeq)/Veq  …①
ここで、Vendは終点の滴下量(mL), Veqは当量点の滴下量(mL)

<強酸の強塩基による滴定における滴定誤差>

1価の強酸(たとえばHCl) Cao mol/L, Va mLを1価の強塩基(たとえばNaOH) Cbo mol/Lで滴定して滴下量がVb mLのとき、「滴定率(φ)」を次式のように定義します。
φ = CboVb/(CaoVa)  …②
当量点においては、φ= 1つまりCaoVa = CboVeqとなります。
終点における滴定率をφ
endとすると、
φend = CboVend/(CaoVa)  …③
したがって滴定誤差(E)は、
E = (Vend-Veq)/Veq = φend1  …④となります。    

強酸-強塩基の滴定曲線の式は次式で与えられます(2021/04/18)
Vb = Va
(CaoΔ)/(CboΔ)  …⑤
ここで、Δ=[H][OH] = [H]-Kw/[H]
⑤式を②式に代入して整理すると、
φ= (Cbo/Cao)(Cao-Δ)/(Cbo+Δ) …⑥
となります(*1)
(*1) φ= CboVb/(CaoVa) = Cbo(Va(Cao-Δ)/(Cbo+Δ))/(CaoVa)) = (Cbo/Cao)(Cao-Δ)/(Cbo+Δ)   

したがって、Δ=[H][OH]とφの代わりに、Δend=[H]end[OH]endとφendを代入すれば、④, ⑥式から、
E =
φend1 = (Cbo/Cao)(Cao-Δend)/(Cbo+Δend)1 …⑦
つまり、pHendが与えられれば⑦式から滴定誤差Eを求めることができます。   

⑦式を用いた計算結果を-に示します。計算列(C)でまずpH10におけるE%を求め、次いでデータテーブル機能を用いてpH104と変化させたときのE%を求めました。pHend-E%の関係図また横軸と縦軸を交換した図を-に示します(この図は滴定曲線を表します)。グラフ中には参考としてフェノールフタレインおよびメチルレッドの変色域を示しました。   

-
2021-05-02-fig1
-
2021-05-02-fig2

誤差の近似式
さらに、終点の体積Vendは当量点の体積Veqにほとんど等しい、つまりVendVeqの近似が成立するとき、Eを求めるのにもう少し計算の容易な近似式を導くことができます。

②式および⑤式から、次式が得られます(*2)
φ=1
Δ(VaVb)/(VaCao)
したがって終点では、
E =φend1 = -Δend(VaVend)/(VaCao)
一方、終点でVendVeqが成立する場合
(Vend
Va)/Va = (CboCao)
/Cbo
が成立します (*3)

したがって、次のような近似式が得られます。
E =
φend1 =
Δend(CboCao)/(CaoCbo)  …⑧
(*2) ⑤式に(CboΔ)を掛けて、
Vb(CboΔ) = Va(CaoΔ)
整理すると、
(Va
Vb)
Δ = VaCaoVbCbo
両辺をVaCaoで割り、②式を代入すると、
Δ(VaVb)/(VaCao) = 1VbCbo/(VaCao) = 1φ
∴ φ= 1Δ(VaVb)/(VaCao)

(*3) 当量点ではVeqCbo = VaCaoなので、
(Veq
Va)/Va = (VaCao/CboVa)/Va = (VaCaoVaCbo)/(VaCbo) = (CboCao)/Cbo
したがって、VendVeqのときは、
(VendVa)/Va(CboCao)/Cbo      

⑧式(近似式)を用いたときの計算結果およびpH-E%のグラフを-に示します。滴定誤差が小さい範囲において⑧式の値は⑦式の値によく一致していることが分かります。

-
2021-05-02-fig3

例題1 濃度(1) Cao= 0.1 mol/L, (2) 0.01 mol/L, (3) 0.001 mol/Lの塩酸を、フェノールフタレイン(pHend=8.5とする)を指示薬として酸と同濃度のNaOHで滴定したときの滴定誤差E%は?
Cao=Cbo=0.1 mol/LのときpHend=8.5における滴定誤差E%は、⑧式(近似式)を用いて計算すると、
E(%) = 
(10^-8.510^-14/10^-8.5)*(0.1+0.1)/(0.1*0.1)*100
(10^-14/10^-8.5)*(0.1+0.1)/(0.1*0.1)*100 = 0.0063(%)) …((1))
同様に、Cao=Cbo=0.01 mol/LのときはE(%)=0.063() …((2))
Cao=Cbo=0.001 mol/L
のときはE(%)=0.63() …((3))
試料濃度および滴定剤濃度が低くなるにつれて滴定誤差は大きくなることが分かる(*4)
(*4) 実際の滴定における滴定誤差は、ここで求めた指示薬に起因する滴定誤差だけではない。実際の滴定ではたとえば空気中からのCO2による影響を無視することはできない。

<1価弱酸の強塩基による滴定における滴定誤差>
1価の弱酸を強塩基で滴定する場合、滴定曲線の式は次式で与えられます(2021/04/18)
Vb = Va(Caofa0
Δ)/(CboΔ) …(a)
ここで、Δ=[H][OH]

fa0 = [A-]/Ca = 1/(1[H]/Ka)
一方、滴定率をφ = CboVb/(CaoVa)とすると、
φ = CboVb/(CaoVa)  …(b)
= CboVa(Caofa0
Δ)/(CboΔ)/(CaoVa)
= (Cbo/Cao)(Caofa0
Δ)/(CboΔ)
φ1 = (Cbo/Cao)(Caofa0Δ)/(CboΔ)1
したがって、滴定誤差(E=φend1)
E =φend-1= (Cbo/Cao)(Caofa0Δend)/(CboΔend)-1 …(c)   

また、終点でVendVeqが成立する場合の近似式は、
(a)
式と(b)式から、
φ= fa0
Δ(VaVb)/(VaCao)
となります(*5)
弱酸の場合も強酸と同様に (VendVa)/Va(CboCao)/Cbo (*3)が成立するので、結局次の近似式が得られます。
E =
φend1 = fa01
Δend(CboCao)/(CaoCbo) (d)
(*5) (a)式に(CboΔ)を掛けて、
Vb(CboΔ) = Va(Caofa0Δ)
整理すると、
(Va
Vb)
Δ = VaCaofa0VbCbo
VaCaoで割り、(b)式を代入すると、
Δ(VaVb)/(VaCao) = fa0VbCbo/(VaCao) = fa0φ
∴ φ= fa0Δ(VaVb)/(VaCao)

0.01 mol/L酢酸を0.01 mol/L NaOHで滴定したときの(c)式および(d)(近似式)で求めたE%値の比較を-に示します。当量点付近において近似式(d)は十分に有効であることが分かります。

-
2021-05-02-fig4

例題2 0.01 mol/Lの酢酸(HA), 20 mL0.01 mol/LNaOHで滴定するとき、指示薬としてフェノールフタレイン(pHend=8.5とする)を用いる場合、滴定誤差E(%)は? pKa=4.76とする。
Cao=0.01,  Cbo=0.01
Δend = [H]end[OH]end = 10^-8.510^-14/10^-8.5 = -3.16×10^-6
fa0 = 1/(1+[H]end/Ka) = 1/(1+10^-8.5/10^-4.76) = 0.999818
これらの値を(d)(近似式)に代入して、
E = 0.999818
13.16×10^-6×(0.01+0.01)/(0.01×0.01) = 4.5×10^-4
(
) E(%) = 0.045%

<1価弱塩基の1価弱酸による滴定における滴定誤差>
1価の弱塩基(NH3)(Cbo mol/L, 共役酸の酸解離定数Kn)1価の弱酸(HA)(Cao mol/L, 酸解離定数Ka)で滴定する場合、滴定曲線の式は次式で与えられます(2021/04/18)

Va = Vb(Cbofb1Δ)/(Caofa0Δ)
ここで、Δ=[H][OH]

fb0 = [NH3]/Cb = 1/(1[H]/Kn)
fb1 = [NH4]/Cb = fb0[H]/Kn
fa0 = [A]/Ca = 1/(1
[H]/Ka)

一方、滴定率をφ = CaoVa/(CboVb)とすると、
φ-1 = (Cao/Cbo)(Cbofb0
Δ)/(Caofa0Δ)1
したがって、滴定誤差(E=φend1)

E =φend1= (Cao/Cbo)(Cbofb1Δend)/(Caofa0Δend)1 ()   

例題3 0.1 mol/L NH3 (pKn=9.25) 20 mL0.1 mol/L クロロ酢酸 (pKa=2.87)で滴定するとき、終点が当量点から±0.2 pH以内である場合の滴定誤差は?
計算方法は次の通り。
まず、当量点におけるpHeqを求め、次式により終点のpHendを求める。
pHend = pHeq
±0.2
次いで、この値から
Δend [H]endKw/[H]endを求め、()式から滴定誤差Eを求める。
エクセルを用いた計算結果を-に示す。
(
) 0.062% ≦E(%) 0.062%

-
2021-05-02-fig5


前回(2021/04/18)は酸塩基滴定曲線の一般式を導き、これをもとに1種類の物質だけの場合について(理論的)滴定曲線を作りました。今回はその続きで、混合物についての酸塩基滴定曲線を作ります。滴定曲線の一般式の理屈さえ理解すれば、どのような複雑な酸塩基滴定曲線でも簡単に作成することができます。

試料中の物質sa, sb,…を滴定剤中の物質ta, tb, …で酸塩基滴定するとき、CsxoFsxCtxoFtx(x=a, b, )には加成性が成立します。したがって混合物の滴定曲線は次のような一般式で表すことができます。
Vt =
Vs(CsaoFsaCsboFsb+…+Δ)/(CtaoFtaCtb0Ftb+…+Δ)
ここで、Δ=[H+][OH-]
Csxo:試料中の物質sxの初濃度(mol/L)
Ctxo
:滴定剤中の物質txの初濃度(mol/L)
Vs
:試料の体積(mL)
Vt
:滴下した滴定剤の体積(mL)
Fsx = qsx0fsx0
qsx1fsx1qsx2fsx2+…
Ftx = qtx0fti0
qtx1fti1qtx2ftx2+…
fsxi:物質sxから生じる化学種iの存在分率(強酸、強塩基の場合は1)(*1)
 
ftxj
:物質txから生じる化学種jの存在分率(強酸、強塩基の場合は1)(*1)
qsxi:物質sxの化学種iの価数(陽イオンはの整数、陰イオンはの整数)
qtxj
:物質txの化学種jの価数(陽イオンはの整数、陰イオンはの整数)
(*1) たとえばCso mol/LNa2CO3の場合、[Na]= 2Cso mol/LなのでNa+の存在分率には係数2を掛ける。またNa3PO4 の場合は係数3が必要。

例題 Cspo=0.1mol/Lリン酸およびCsao=0.2 mol/L酢酸(HA)を含む試料 20 mLCto=0.1 mol/LNaOHで滴定するときの滴定曲線は リン酸の酸解離定数をpK1=2.15, pK2=7.20, pK3=12.38、酢酸の酸解離定数をpKa=4.76、また水のイオン積をpKw=14.00 とする。
関係式は次のとおり、
fsp0 = [PO43-]/Csp= 1/(1
[H]/K3[H]^2/(K3K2)[H]^3/(K3K2K1)),  qsp0 = -3
fsp1 = [HPO42-]/Csp = [H]fsp0/K3,  qsp1 = -2
fsp2 = [H2PO4-]/Csp =[H]fsp1/K2,  qsp2= -1
fsp3 = [H3PO4]/Csp = [H]fsp2/K1,  qsp3 = 0
Fsp= qsp0fsp0qsp1fsp1qsp2fsp2qsp3fsp3 = 3fsp02fsp1fsp2

fsa0= [A-]/Csa = 1/(1+[H]/Ka),  qsa0 = -1
fsa1 = [HA]/Csa = [H]fsa0/Ka,  qsa1 = 0
Fsa = qsa0fsa0qsa1fsa1 = fsa0

ft = [Na+]/Ct = 1,  qt = +1
Ft= qtft = 1

Vt = Vs(CspoFspCsaoFsaΔ)/(CtoFtΔ)

pHを与えてVtを求めるためE列を計算列として計算をおこなった。ここではpH=1とした。E列の右に計算式を示した。pHを変化させたときの一連のVtの値はエクセルのデータテーブル(2021/04/18)で作成した。pH(1~13)を与えてVtを求めた計算結果および滴定曲線図-1(a), -1(b)に示す。

-1(a)
2021-04-25-fig1a
図-1(b)
2021-04-25-fig1b

例題2 Csco=0.1 mol/L炭酸ナトリウム(Na2CO3)およびCsno=0.1 mol/L水酸化ナトリウムを含む試料 20 mLCto=0.1 mol/L 塩酸で滴定するときの滴定曲線は? 炭酸の酸解離定数をpK1=6.35, pK2=10.33また水のイオン積をpKw=14.00 とする。
fsc0 = [CO32-]/Csc = 1/(1
[H]/K2[H]^2/(K2K1)), qsc0 = -2
fsc1 = [HCO3-]/Csc = [H]fsc0/K2, qsc1 = -1
fsc2 = [H2CO3]/Csc = [H]fsc1/K1, qsc2 = 0
fscn = [Na+]/Csc = 2,  qscn = +1
Fsc = qsc0fsc0qsc1fsc1qsc2fsc2qscnfscn= 2fsc0fsc12

fsn = [Na+]/Csn= 1,  qsn = +1
Fsn =
qsnfsn = fsn

ft = [Cl-]/Ct= 1,  qt = -1
Ft =
qtft= 1

Vt = Vs(CscoFscCsnoFsn+Δ)/(CtoFt+Δ)

pHを与えてVtを求めるためE列を計算列として計算をおこなった。ここではpH=14とした。E列の右に計算式を示した。pHを変化させたときの一連のVtの値はデータテーブルで作成した。pH(141)を与えてVtを求めた計算結果および滴定曲線-に示す。

-
2021-04-25-fig2


例題3 Csgo=0.1 mol/Lグリシン(HG)およびCsao=0.2 mol/L酢酸(HA)を含む試料 20 mLCto=0.1 mol/L NaOHで滴定するときの滴定曲線は? グリシンの酸解離定数をpK1=2.35, pK2=9.78、酢酸の酸解離定数をpKa=4.76また水のイオン積をpKw=14.00とする。
関係式は次のとおり、
fsg0 = [G-]/Csg = 1/(1
[H]/K2[H]^2/(K2K1)),  qsg0 = -1
fsg1 = [HG-]/Csg = [H]fsg0/K2, qsg1 = 0
fsg2 = [H2G+]/Csg = [H]fsg1/K1, qsg2 = +1
Fsg = qsg0fsg0qsg1fsg1qsg2fsg2= fsg0fsg2

fsa0 = [A-]/Csa= 1/(1+[H]/Ka),  qsa0 = -1
fsa1 = [HA]/Csa = [H]fsa0/Ka,  qsa1 = 0

Fsa =
qsa0fsa0qsa1fsa1 = fsa0

ft = [Na+]/Ct = 1,  qt = +1
Ft= qtft = 1

Vt = Vs(CsgoFsgCsaoFsaΔ)/(CtoFtΔ)

pHを与えてVtを求めるためE列を計算列として計算をおこなった。ここではpH=1とした。E列の右に計算式を示した。pHを変化させたときの一連のVtの値はデータテーブルで作成した。pH(113)を与えてVtを求めた計算結果および滴定曲線-に示す。

-
2021-04-25-fig3

例題4 ホウ酸(HB)(*2)、クエン酸(H3C)、リン酸(H3PO4)およびNaOHを含む溶液は広いpH範囲にわたって緩衝作用を示す。Csbo=0.2mol/Lホウ酸(HB)およびCspo=0.05mol/Lクエン酸(H3C)を含む試料 100 mLにCtpo=0.1 mol/Lリン酸三ナトリウム(Na3P)を添加したときのVtとpHの関係は? ホウ酸の酸解離定数をpKb=9.24、クエン酸の酸解離定数をpKc1=3.13, pKc2=4.76, pKc3=6.40、リン酸の酸解離定数をpKp1=2.15, pKp2=7.20, pKp3=12.38また水のイオン積をpKw=14.00とする。
(*2)実際の酸塩基反応式はB(OH)3H2O B(OH)4-H+
fsb0 = [B-]/Csb = 1/(1
[H]/Kb),  qsb0= -1
fsb1 = [HB]/Csb = [H]fsb0/Kb,  qsb1 = 0
Fsb = qsb0fsb0qsb1fsb1= fsb0

fsc0 = [C3-]/Csc= 1/(1+[H]/K3+[H]^2/(K3K2)+[H]^3/(K3K2K1)),  qsc0 = -3
fsc1 = [HC2-]/Csc = [H]fsc0/K3,  qsc1 = -2
fsc2 = [H2C-]/Csc = [H]fsc1/K2,  qsc2 = -1
fsc3 = [H3C]/Csc = [H]fsc2/K1,  qs3 = 0
Fsc = qsc0fsc0qsc1fsc1qsc2fsc2qsc3fsc3 = -3fsc0-2fsc1fsc2

ftp0 = [PO43-]/Ctp= 1/(1[H]/K3[H]^2/(K3K2)[H]^3/(K3K2K1)), qtp0 = -3
ftp1 = [HPO42-]/Ctp = [H]fsp0/K3, qtp1 = -2
ftp2 = [H2PO4-]/Ctp =[H]fsp1/K2,  qtp2= -1
ftp3 = [H3PO4]/Ctp = [H]fsp2/K1, qtp3 = 0
ftn =[Na+]/Ctp =
3,  qtn = +1
Ft = qtp0ftp0qtp1ftp1qtp2ftp2qtp3ftp3qtnftn = 3ftp02ftp1ftp23

Vt = Vs(CsboFsbCscoFsc+Δ)/(CtpoFt+Δ)

pHを与えてVtを求めるためE列を計算列として計算をおこなった。ここではpH=1とした。E列の右に計算式を示した。pHを変化させたときの一連のVtの値はデータテーブルで作成した。pH(213)を与えてVtを求めた計算結果およびVt-pH図を-に示す。Na3PO4添加とともにpHはなだらかに上昇していることが分かる。

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2021-04-25-fig4

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