今回は、1価の弱酸を1価の強塩基で滴定する場合です。例として、NaOHによる酢酸(HAと略す)の滴定を取り上げます。エクセルシートの作成には、「二分法」と「データテーブル」を利用します。

詳細は、次の文献を参照願います。
 吉村季織:J. Comput. Chem. Jpn., Vol. 5, No. 1, pp. 29–38(2006)
 「Microsoft Excelのテーブル機能を利用した酸塩基滴定曲線シミュレーション」

 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jccj/5/1/5_1_29/_article/-char/ja/

<関係式>

酢酸(HA)溶液試料のモル濃度をCaomol/L, 体積をV mL, 滴定剤(水酸化ナトリウム溶液)のモル濃度をCbo mol/L, 滴下量をT mLとします。
また、酢酸の電離定数(酸解離定数)Ka, 水のイオン積をKwとします。

滴定中、ビーカーの中の被滴定溶液中では次の平衡が成立しています。
HA ⇆ H+
A-
NaOH → Na+
OH-
H2O ⇆ H+
OH-
したがって、被滴定溶液中には、H+, OH-, Na+, HA, A-の化学種が存在します。

これらの化学種の濃度を、[H+], [OH-], [Na+], [HA], [A-]とすると、次の関係式が成立します。
酸および水の電離から、
Ka =[H+][A-]/[HA]
 
Kw =[H+][OH-]
 

被滴定溶液中の酢酸濃度、NaOH濃度をCa, Cbとすると、
物質バランスから、
Ca = CaoV/(V+T)= [HA][A-] 
Cb= CboT/(V+T) =[Na+] 

電荷バランスから、
[H+]
[Na+] = [OH-][A-] 

[OH-], [Na+], [HA]
および[A-]を、[H+],Ka, Kw, Cao,V, CboおよびTで表すと、
②から、[OH-] = Kw/[H+]
, ③から、[A-]= CaoV/(V+T)/(1[H+]/Ka)
④から、[Na+] = CboT/(V+T)
⑤から、Q = [H+][OH-][Na+][A-] = 0 
したがって、
Q = [H+]
Kw/[H+]CboT/(VT)CaoV/(VT)/(1[H+]/Ka) = 0

Q = 0
は、整理すると分かるのですが、[H+]に関する3次方程式であり、このままでは簡単には解けません。このため、エクセルを用いて近似解を求めます。エクセルシートの作成には、「二分法」と「データテーブル」を利用します。

<「二分法」の表の作成>
(1) Ka, Cao,V, Cbo, T, Kw の値(定数)E3E8のセルに入れる。
  ・Tの値(E7)には0を入れる。
(2)
 pHの初期値a0, m0,b0B14D14のセルに入れる。
  ・B14 =0
  ・C14 =7
  ・D14 =14
(3)
 二分法のロジック式をB15D15のセルに入れる。
  ・B15 =IF(E14<0,B14,C14)
  ・C15 =(B15+D15)/2
  ・D15 =IF(B15=C14,D14,C14)
   (E14Q値のセルであるがとりあえず空欄としておく)
(4)
 二分法のロジック式をコピーする。
  ・B15D15を選択し、B44D44までコピーする(右下隅のにしてドラッグ)。
(5)
 初期値について濃度に関する計算式を入れる。(E14J14
  ・E14 =F14-G14+H14-I14
  ・F14 =10^(-C14)
  ・G14 =$E$8/F14
  ・H14 =$E$6*$E$7/($E$5+$E$7)
  ・I14 =($E$4*$E$5/($E$5+$E$7))/(1+F14/$E$3)
  ・J14 =I14*F14/$E$3
(6)
 濃度の計算式をコピーする。
  ・E14J14を選択し、E44J44までコピーする。
(7)
 pHの値のコピー
  ・E9 =C44

これで二分法の表ができました(-1, -2A列~J)C44のセルが求めるpHの値(T=0のとき)です。
しかし滴定曲線を描くためには、Tを変化させてそれぞれのTの値に対するpHを求める必要があります。このためには、エクセルの「データテーブル」の機能を用います。

<データテーブルの作成>
(1) Tの値を入れる。
  ・0.1きざみでT=015 mLまでいれる。(L3:L153
(2)
 T=0のときのpHのセルに二分法の表で求めたpHをコピーする。
  ・M3 =E9
(3)
 データテーブルの範囲を指定する。(L3:M153
(4)
 データテーブルを作成する。
  ・メニューバー:「データ」
  ・ツールバー:「What-If分析」「データテーブル」「データテーブル」ダイアログが出る(下図)「列の代入セル」に”E7”を指定OK

2019-03-08-fig1


これで、データテーブルが完成です(-1L, M)

あとはL2:M153を指定して散布図を作成すれば滴定曲線ができます(散布図は適当にカスタマイズしてください)。

<結果>
-1 完成したエクセルシート
 (0.01 mol/L 酢酸(HA), 10 mL0.01 mol/LNaOHで滴定したとき) 

2019-03-08-fig2

 


-2 「二分法」表の数式の表示 

2019-03-08-fig-3

-3 滴定曲線

2019-03-08-fig4


(追記) こちらのブロブもご覧ください。
http://ftacg.livedoor.blog/archives/29153580.html