難溶性塩MaLbの溶解度積は、論文、教科書、辞典、データ集等の資料に記載されています。この溶解度積の値およびその他の平衡定数から、ある溶液条件における溶解度を求める方法を考えます(*2

注(*2

溶解度積(Ksp)の値は沈殿の生成条件(結晶形等)の違いによって大きく異なる場合が多い。以下の計算において求めた溶解度は、あるKspの値に対する溶解度として考えてほしい。また、特に断らないかぎりは活量=濃度とする。

 

<単純な系の溶解度>

最初、固有溶解度が非常に小さく、過剰な沈殿剤を含まず、酸塩基反応・錯生成反応のような副反応がない単純な系を考えます。

 

難溶性塩MaLbのモル溶解度をS(mol/L)とすると、[M]aS[L]bSなので、溶解度と溶解度積の関係は、

MaLb(固体) aM bL ………①

Ksp[M]^a[L]^b (aS)^a×(bS)^ba^ab^bS^(a+b)

S{(Ksp/(a^ab^b)}^(1/(a+b))

特に、a=b=1(たとえば、AgCl, BaSO4など)の場合は、S=√(Ksp)

となります。

 

<共通イオン効果>

①式において、金属イオンMに対して、大過剰のL(濃度:CL)が存在する場合、

[M] = aS,  [L] = bS+CLなので、

Ksp [M]^a[L]^b (aS)^a×(bSCL)^b

ここで、bS<<CLならば、bSCLに対して無視できるので、

Ksp [M]^a[L]^b (aS)^a×CL^b

したがって、物質MaLbの溶解度Sは、

S=[M]/a={(Ksp/CL^b)^(1/a)}/a

特に、a=b=1(たとえば、AgCl, BaSO4など)の場合は、S=Ksp/CL

 

したがって、Lが過剰にあると、溶解度Sは減少します。これは「共通イオン効果」と呼ばれます。

AgClの溶解度(S)と溶液中の塩化物イオンの濃度([Cl])の関係を下図に示します。破線は共通イオン効果のみを考慮した場合の溶解度(log[Ag+])です。実線はさらに錯生成を考慮した溶解度Sです(錯生成の効果については次回説明します)。

2019-04-08-fig1 - コピー

<活量の効果>

活量Aと濃度Cの関係は、A=Cγ (γ:活量係数) なので、

MaLb塩の溶解度積は、

Ksp = [M]^a[M]^b

Kspº = ([M]γa)^a([L]γb)^b = Kspγa^aγb^b

Ksp = Kspº/(γa^aγb^b)

となります。

 

共存イオンが増加すると、つまりイオン強度が大きくなると、一般にγは1より小さくなり、溶解度は大きくなります。しかし、極端にイオン強度が大きくなると、逆にγは1より大きくなり、溶解度は減少するようになります。

活量効果は、イオン強度μが極端に大きくなければ(μ≲0.3)、デバイ・ヒュッケルの式による補正が可能です。