Zn(NO3)2溶液にNaOH溶液を加えると、最初Zn(OH)2の白色沈殿が生成しますが、さらに過剰に加えるとZn(OH)4^2-を生成して沈殿は溶解します。反応式は次の通りです。
Zn^2+ + OH- → ZnOH+
ZnOH+ + OH- → Zn(OH)2(aq) → Zn(OH)2↓
Zn(OH)2 + OH- → Zn(OH)3^-
Zn(OH)3^- + OH- → Zn(OH)4^2-
この反応について、エクセルを用いて定量的に解明したいと思います。
濃度Czn mol/Lの硝酸亜鉛溶液に、水酸化ナトリウムを濃度がCna mol/Lとなるように添加したしたときの溶解度Sを求めます。計算の煩雑さを避けるためNaOHの添加による体積の変化は無視します。また、Zn(OH)2の溶解度積をpKsp=15.5、錯生成定数をlogβ1=5.0, logβ2=10.2, logβ3=13.9, logβ4=15.5とします(25℃)。活量係数は1とします。
<関係式>
●平衡定数は、
Ksp = [Zn][OH]^2
β1 = [ZnOH]/([Zn][OH])
β2 = [Zn(OH)2]/([Zn][OH]^2)
β3 = [Zn(OH)3]/([Zn][OH]^3)
β4 = [Zn(OH)4]/([Zn][OH]^4)
●物質バランスから、溶液中の全亜鉛濃度を[Zn’]として、
[Zn’] = [Zn]+[ZnOH]+[Zn(OH)2]+[Zn(OH)3]+[Zn(OH)4]
= [Zn](1+β1[OH]+β2[OH]^2+β3[OH]^3+β4[OH]^4) = [Zn]α
(沈殿平衡が成立するときは、S = [Zn’]< Czn)
(沈殿平衡が成立しないときは、[Zn’] = Czn)
●化学種濃度は、
[Zn] = Ksp/[OH]^2 (沈殿平衡が成立するとき)
[Zn] = Cna/α (沈殿平衡が成立しないとき)
[ZnOH] = β1[Zn][OH]
[Zn(OH)2 ] = β2[Zn][OH]^2
[Zn(OH)3] = β3[Zn][OH]^3
[Zn(OH)4] = β4[Zn][OH]^4
[H] = 10^-pH
[OH] = 10^-14/[H]
[NO3] = 2Czn
[Na] = Cna
●電荷バランスから、
[H]+2[Zn]+[ZnOH]+[Na] =[OH]+[Zn(OH)3]+2[Zn(OH)4]+[NO3]
Q = [H]-[OH]+2[Zn]+[ZnOH]-[Zn(OH)3]-2[Zn(OH)4]-[NO3]+[Na] = 0
<エクセルシートの作成>
Czn = 0.1 mol/Lとし、Cnaの値を変化させたときの全亜鉛濃度[Zn’]または溶解度Sを求めます。エクセルシートの作り方は、前回(2019/01/14)のAl(OH)3のときと同じです。目的セルはQ = 0, 変数セルはpHとして次のようにケース分けをしてソルバーを実行します。
・NaOHを過剰に添加して沈殿平衡が成立しないとき([Zn]=Czn/α)
・沈殿平衡成立の上限濃度(H列)
・沈殿平衡が成立するとき ([Zn]=Ksp/[OH]^2)
・沈殿平衡成立の下限濃度(BJ列)
・Cnaが沈殿平衡成立の濃度下限以下のとき([Zn]=Czn/α)
求めた[Zn’], SとNaOH添加濃度またはpHの関係をグラフにします。
<結果>
添加したNaOHの濃度と[Zn’]またはSの関係を図-1に、pHと[Zn’]またはSの関係を図-2に示します。
図-1
図-2
0.1 mol/L硝酸亜鉛にNaOHを添加していくと、添加したNaOHの濃度が6×10^-4 mol/L (pH=6.8)付近で沈殿生成が始まり、0.2 mol/L(pH=9.6)付近で溶解度は最小(S=7×10^-6 mol/L)になり、さらにNaOHを過剰に加えると、Zn(OH)4^2-を作って溶解度が増加し、0.7mol/L (pH=13.5)付近で沈殿が完全に再溶解することが分かります。
作成したエクセルシートの抜粋を図-3に示します。
図-3



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