前回(2019/6/9)はカドミウムイオンにアンモニアを加えることを考えました。今回はその応用問題で、Cd2+にアンモニア、シアン化カリウム、硫化水素ナトリウムを順次添加するとどうなるか、を考えます。カドミウムの検出にこの一連の操作を用いることがあります。
具体的には、濃度Ccd = 0.1 mol/Lの硝酸カドミウム溶液に、濃度がCnh となるようにアンモニアを添加し、次いでここに濃度がCcn となるようにシアン化カリウムを加え、さらに濃度がCs となるように硫化水素ナトリウムを加えることを考えます。アンモニア、KCN、NaHSの添加による体積の変化は無視します。
また、平衡定数は前回(2019/6/9)用いた値以外に
カドミウムのシアノ錯体の生成定数を、
logβc1=5.2, logβc2=9.6, logβc3=13.9, logβc4=17.1
シアン化水素の酸解離定数を、pKc = 9.2
CdSの溶解度積を、pKsps = 26.1
硫化水素の酸解離定数を、pKs1 = 7.0, pKs2 = 14.0
とします。
また、活量係数はすべて1とします。
<Cd2+にアンモニアを加えたとき>
前回のデータを使って、アンモニアの添加量によるCd(OH)2沈殿生成量とCd(NH3)3-, Cd(NH3)42-濃度が変化する様子を図-1に示します。
図-1
アンモニアの濃度を5.0mol/Lとすると、Cd(OH)2沈殿は消え、Cd(NH3)42+が主要成分となることが分かります。
<次いでKCNを加えたとき>
この溶液(Cnh=5.0 mol/L)にKCNを加えた場合について考えます。
●ソルバーのパラメータ設定
・目的セル:電荷バランス、Q =0
・変数セル:pH, pNH3およびpCN
・制約条件:アンモニアおよびシアンの物質バランス、
Rn = Cnh-[NH3’] = 0
Rc = Ccn-[CN’] = 0
●[Cd]の計算式
・[Cd] = Ccd/α
結果は次の通りです。
図-2
KCN濃度が、0.2 mol/L付近ではCd(NH3)42+とCd(CN)42-がほぼ等量で存在し、0.4 mol/Lを超えると、Cd(CN)42-が主となります。
<さらにNaHSを加えたとき>
アンモニアおよびKCNを含む溶液(Cnh=5.0 mol/L, Ccn=1.0 mol/L)にさらにNaHSを添加した場合は、
●ソルバーのパラメータ設定
・目的セル:電荷バランス、Q =0
・変数セル:pH, pNH3, pCNおよびpS
・制約条件:物質バランス、
Rn = Cnh-[NH3’] = 0
Rc = Ccn-[CN’] = 0
Rs = (Cs-[S’])-(Ccd-[Cd’]) = 0
●[Cd]の計算式
・[Cd] =Ksps/[S]
結果は次の通りです。
図-3
加えたNaHSが0.1mol/Lを超えると、CdSが定量的に沈殿します。
なお、エクセルシート(抜粋)を図-4に示します。
図-4
<定性分析への利用>
もし、Cd2+と同時にPb2+, Bi3+, Cu2+が含まれる溶液にアンモニアを添加すると、アンモニア錯体を作らないPb2+, Bi3+は水酸化物を作って沈殿し、Cu2+, Cd2+はアンモニア錯体を作ってろ液に残ります。沈殿をろ別したあと、ろ液にKCNを加えると、Cu(HN3)2+, Cd(HN3)42+は次の反応により、それぞれCu(CN)43-, Cd(CN)42-になります。
2Cu(HN3)2+ + 9CN- + 2OH- → 2Cu(CN)43- + CNO- + 8NH3 +H2O
Cd(HN3)42+ + 4CN- → Cd(CN)42- + 4NH3
この溶液にNaHSを加えると、Cd(CN)42-はCdSの黄色沈殿をつくります。
Cd(CN)42- + S2- → CdS↓ + 4CN-
一方、Cu(CN)43-は硫化物の沈殿を作りません(Cu(CN)43-の生成定数はlogβ=30.3と非常に大きいので)。
したがって、黄色沈殿が生成すればカドミウムイオンの存在を確認できます。




コメント