ニッケル(II)イオン(Ni2+)にアンモニア水を加えると起きる反応について、エクセルのソルバー機能を用いて定量的に解析します。
具体的には、濃度Cni mol/Lの硝酸ニッケル溶液に、濃度がCnh mol/Lとなるようにアンモニアを添加することを考えます。計算の煩雑さを避けるためアンモニアの添加による溶液の体積変化は無視します(NH3ガスを吹き込むと考えてもよい)。
また、Ni(OH)2の溶解度積をpKsp = 15.2
アンモニウムイオンの酸解離定数をpKn = 9.37
ニッケルのヒドロキソ錯体の生成定数を、
logβo1=4.1, logβo2=9.0, logβo3=12.0
ニッケルのアンミン錯体の生成定数を、
logβn1=2.7, logβn2=4.8, logβn3=6.4, logβn4=7.5, logβn5=8.1, logβn6=8.0
とします。活量係数は1とします(25℃)。
Cni = 0.1 mol/Lとし、Cnhの値を変化させたときのニッケルの溶解度Sおよび化学種濃度を求めます。解析法の詳細はここ(1) , (2) , (3)
●ソルバーのパラメータ設定
・目的セル:電荷バランス、Q =0
・変数セル:pH およびpNH3
・制約条件:アンモニアの物質バランス、R = Cnh-[NH3’] = 0
●特に、沈殿の生成・消滅境界におけるパラメータ設定は、
・目的セル:電荷バランスQ =0
・変数セル:pH, pNH3 およびCnh
・制約条件:R = 0 および[Ni][OH]^2/Ksp = 1
●[Ni]の計算式
・沈殿のないとき:[Ni] =Cni/α
・沈殿のあるとき:[Ni] =Ksp/[OH]^2
結果は次の通りです。
図-1(アンモニア濃度に対する溶解度・化学種濃度)
図-2(溶解度・化学種濃度のpH依存性)
図-3(溶解度および沈殿率)
図-4(エクセルシート(計算式の例))
0.1 mol/L硝酸ニッケルにアンモニアを加えると、添加したアンモニア濃度が7×10^-4 mol/L (pH6.9)付近でNi(OH)2の沈殿生成が始まり、0.21 mol/L (pH8.1)付近で溶解度は最小(S=6×10^-3 mol/L)となり、このときNi(OH)2の沈殿率は94%くらいです。さらにアンモニアを過剰に加えると、溶解度が増加し、2.4 mol/L (pH11.8)付近で沈殿が完全に再溶解することが分かります。
ニッケルの化学種について言うと、当量点(Cnh=0.2 mol/L)まではNi^2+ が主成分ですが、当量点付近ではNi^2+ と低次のアンミン錯体(NiNH3^2+ , Ni(NH3)2^2+ , Ni(NH3)3^2+ )が主となります。ヒドロキソ錯体は低濃度のままです。また、当量点を過ぎるとNi(NH3)3^2+, Ni(NH3)4^2+ , Ni(NH3)5^2+ が主となり、沈殿消滅後はNi(NH3)6^2+が主成分となります。




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