(II)イオン(Pb2+)にアンモニア水を加えると起きる反応について、エクセルのソルバー機能を用いて定量的に解析します。Pb2+はアンミン錯体を作りません。したがって生成するのは、Pb(OH)2沈殿とヒドロキソ錯体のみです。

 

具体的には、濃度Cpb mol/Lの硝酸鉛(II)溶液に、濃度がCnh mol/Lとなるようにアンモニアを添加することを考えます。計算の煩雑さを避けるため、アンモニアの添加による溶液の体積変化は無視します。

 

また、Pb(OH)2の溶解度積をpKsp = 15.1

アンモニウムイオンの酸解離定数をpKn = 9.37

鉛のヒドロキソ錯体の生成定数を、

logβo1=6.4, logβo2=10.9, logβo3=13.9

とします。活量係数は1とします(25)

 

Cpb = 0.1 mol/Lとし、Cnhの値を変化させたときのPb(OH)2の溶解度Sおよび化学種濃度をエクセルのソルバー機能を用いて求めます。

 

●ソルバーのパラメータ設定

・目的セル:電荷バランス、Q =0

・変数セル:pH およびpNH3

・制約条件:アンモニアの物質バランス、R = Cnh[NH3’] = 0

 

●特に、沈殿の生成・消滅境界におけるパラメータ設定は、

・目的セル:電荷バランスQ =0

・変数セル:pH, pNH3 およびCnh

・制約条件:R = 0 および[Pb][OH]^2/Ksp = 1

 

[Pb]の計算式

・沈殿のないとき:[Pb] =Cpb/α

・沈殿のあるとき:[Pb] =Ksp/[OH]^2

 

結果は次の通りです。

-1(アンモニア濃度に対する溶解度・化学種濃度)

2019-06-30-fig1

 

-2(溶解度・化学種濃度のpH依存性)

2019-06-30-fig2
 

-3(エクセルシート(計算式の例)

 2019-06-30-fig3

0.1 mol/L硝酸鉛にアンモニアを加えると、添加したアンモニア濃度が0.02 mol/L (pH7.0)付近でPb(OH)2の沈殿生成が始まり、1.72 mol/L(pH10.3)付近で溶解度は最小(S=8.6×10^-5 mol/L)となります。このときPb(OH)2の沈殿率は99.9%くらいです。さらにアンモニアを過剰に加えると、溶解度が若干増加することが分かります。

 

鉛の化学種について言うと、当量点(Cnh=0.2mol/L)付近まではPb^2+ が主成分ですが、当量点付近ではPbOH^+が主となり、さらにアンモニアを添加すると、Pb(OH)2を経て、最終的にはPb(OH)3^-が優勢となります。