Ca(OH)2溶液にCO2ガスを吹き込むとCaCO3が生成して溶液が白く濁る現象はよく知られています。この反応について、エクセルのソルバー機能を用いて定量的に解析します。

 

濃度Cca = 0.005 mol/LCa(OH)2溶液にCO2ガスを吹き込むことを考えます。溶解した全CO2濃度をCx mol/Lとします。

用いた平衡定数(25)は次の通りです。

CaCO3の溶解度積: Ksp = [Ca][CO3],  pKsp= 8.22

CaOH^+の生成定数:βo= [CaOH]/([Ca][OH]),  logβo= 1.3

CaCO3の生成定数:βc= [CaCO3]/([Ca][CO3]),  logβc = 3.2

Ca(HCO3)^+の生成定数:βh= [CaHCO3]/([Ca][HCO3]),  logβh= 1.25

CO2の酸解離定数:K1 = [H][HCO3]/[CO2],  pK1= 6.35

         K2 = [H][CO3]/[HCO3],  pK2= 10.3

活量係数はすべて1とします。また、気相中のCO2との平衡は考えないこととします。

 

<関係式>

物質バランス

[Ca’]= [Ca][CaOH][CaCO3][CaHCO3]

 = [Ca](1+βo[OH]c[CO3]+βh[HCO3]) = [Ca]α

[CO3’]= [CO2][HCO3][CO3][CaCO3][CaHCO3]

 

Cca, Cxおよび[Ca’], [CO3’]の間には、沈殿生成の有無にかかわらず常に次の関係が成立します。

CcaCx = [Ca’][CO3’]

 

電荷バランス

Q = [H][OH]2[Ca][CaOH][CaHCO3][HCO3]2[CO3]= 0

 

<エクセルの取り扱い>

エクセルでのソルバーのパラメータは次の通り。

・目的セル:電荷バランス、Q =0

・変数セル:pOH, pCO3

・制約条件:R = CcaCx([Ca’][CO3’])= 0

[Ca]の計算式

 ・沈殿がないとき:[Ca] = Cca/α

 ・沈殿があるとき:[Ca] =Ksp/[CO3]

 

特に、沈殿の生成・消滅の境界におけるパラメータ設定は、

・目的セル:電荷バランスQ =0

・変数セル:pOH, pCO3 およびCx

・制約条件:R = 0 および [Ca][CO3]/Ksp = 1

[Ca]の計算式:[Ca] = Cca/α

 


結果は次の通りです。

-1(化学種分布)

 2019-08-04-fig1

-2CaCO3の溶解度)

 2019-08-04-fig2

-3CaCO3の沈殿率)

 2019-08-04-fig3

-4(計算結果(抜粋)

 2019-08-04-fig4


0.005 mol/LCa(OH)2溶液にCO2ガスを吹込むと、CO2濃度 10^-5mol/L付近で CaCO3の沈殿生成が始まり、CO2の吹込み量の増加とともに沈殿量は増加し、当量点(CO2濃度 0.005 mol/L, pH=10.0)で沈殿生成量は最大となります。さらに過剰に吹込むと今度は沈殿量が減少に転じ、CO2濃度 0.017 mol/L(pH=6.5)付近で沈殿は完全に消滅します。

 

遊離の炭酸の化学種についていうと、CO2の吹込み量の増加とともに当然、遊離の炭酸の化学種は増加しますが、当量点付近まではCO3^2-濃度が優勢ですが、当量点を超えるとしだいにHCO3^-が優勢になっていくことが分かります。