今回は、酢酸-酢酸アンモニウム緩衝液を含む酢酸バリウム((CH3COO)2Ba)溶液にK2CrO4を加えることを考えます。なお、(CH3COO)2BaBaAc2と略します。

BaAc2, HAc, NH4Ac, K2CrO4の添加濃度をそれぞれ、Cba, Ca, Cn, Ccr (mol/L)とします。

平衡定数は、

Ksp = [Ba][CrO4],  pKsp = 9.67

K1 = [H][HCrO4]/[H2CrO4],  pK1 = 0.2

K2 = [H][CrO4]/[HCrO4],  pK2 = 6.51

Ka = [H][Ac]/[HAc],  pKa = 4.76

Kn = [H][NH3]/[NH4],  pKn = 9.25

とします。また、活量係数はすべて1とします。

 

<関係式>

●物質バランス

[CrO4’] = [CrO4][HCrO4][H2CO4]

Cba[Ba] = Ccr[CrO4’]

 

●電荷バランス

Q = [H][OH]2[Ba][HCrO4]2[CrO4][NH4][Ac][K] = 0

 

各化学種の濃度

[H] = 10^-pH

[OH] =10^-14/[H]

[Ba] = Ksp/[CrO4]  (沈殿のあるとき)

または、[Ba] = Cba  (沈殿のないとき)

[CrO4] = 10^-pCrO4

[HCrO4] = [CrO4][H]/K2

[H2CrO4] = [HCrO4][H]/K1

[NH3] = Cn/(1+[H]/Kn)

[NH4] = [H][NH3]/Kn

[Ac] = (2CbaCaCn)/(1+[H]/Ka)

[HAc] = [H][Ac]/Ka

[K] = 2Ccr

 

<エクセルの取り扱い>

エクセルでのソルバーのパラメータ

・目的セル:電荷バランス、Q = 0

・変数セル:pH, pCrO4

・制約条件:R = CbaCcr([Ba][CrO4’]) = 0

 

沈殿の生成・消滅の境界におけるパラメータ

・目的セル:電荷バランスQ = 0

・変数セル:pH, pCrO4 およびCcr

・制約条件:R = 0 および [Ba][CrO4]/Ksp = 1

[Ba]の計算式:[Ba] = Cba

 

<結果>

結果は次の通りです。

BaAc2, HAc, NH4Acの濃度がそれぞれ、Cba = 0.01mol/L, Ca =0.8 mol/L Cn =0.4 mol/Lの溶液にK2CrO4を添加したときの溶解度を-1に示します。

K2CrO4の添加濃度がおよそ3×10^-5 mol/L以上で沈殿の生成が始まります。

-1

 2019-09-29-fig1


また、K
2CrO4を添加の添加濃度と沈殿率の関係を-2に示します。比較のため、同様にして計算したSrAc2(pKsp=4.65)の沈殿率についても同図に示します。

BaCrO4は、当量よりやや過剰にK2CrO4を添加すれば定量的に沈殿が生成します。一方、SrCrO4は、K2CrO4を大過剰に加えない限り、沈殿は生成しません。したがってK2CrO4を適切に添加すればBa2+Sr2+の分離が可能であることが分かります。

-2
2019-09-29-fig2

計算例を-3に示します。

-3

2019-09-29-fig3