今回は、HCl, NH3および(NH4)2Sを含む溶液に対するNiSの溶解度を求めます。
より具体的には、HCl濃度: Cc=0.3 mol/L, NH3濃度: Cnmol/L, (NH4)2S濃度: Cs=0.1mol/Lの溶液に対して、Cnを変化させてNiSの溶解度sを求めます。アンモニア濃度を高めるとニッケルイオンは最初、無定形のNiS(α)として沈殿しますが、この沈殿を加熱・放置することで結晶性のNiS(β,γ)となります。
<<NiS(α)の溶解度>>
用いた平衡定数は次の通りです。活量係数は考慮しません。
Ksp=[Ni][S], pKsp=19.4 (NiS(α):無定形)
K1=[H][HS]/[H2S], pK1=7.0
K2=[H][S]/[HS], pK2=14.0
Kn=[H][NH3]/[NH4], pKn=9.37
βox=[Ni][OH]x/[Ni(OH)x]
logβo1=4.1, logβo2=9.0, logβo3=12.0
βnx=[Ni][NH3]x/[Ni(NH3)x]
logβn1=2.7, logβn2=4.8, logβn3=6.4, logβn4=7.5, logβn5=8.1, logβn6=8.0
βsx=[Ni][HS]x/[Ni(HS)x]
logβs1=5.0, logβs2=10.5
<ソルバーによる解法>
●物質バランス:
[Ni’] = [Ni]+Σ[Ni(OH)x]+Σ[Ni(NH3)x]+Σ[Ni(HS)x]= s
[S’] = [H2S]+[HS]+[S]+Σx[Ni(HS)x] = Cs+s
[NH3’] = [NH3]+[NH4]+Σx[Ni(NH3)x] = Cn+2Cs
●電荷バランス:
Q = [H]-[OH]+2[Ni]+[NiOH]-[Ni(OH)3]+2Σ[Ni(NH3)x]+[NH4]
+[Ni(HS)]-[HS]-2[S]-[Cl]
●化学種濃度:
[H] = 10^-pH
[OH] = Kw/[H]
[Ni] = Ksp/[S]
[Ni(OH)x] = βox[Ni][OH]^x
[Ni(NH3)x] = βnx[Ni][NH3]^x
[Ni(HS)x] = βsx[Ni][HS]^x
[NH4]= 10^-NH4
[NH3]= Kn[NH4]/[H]
[H2S]= 10^-H2S
[HS] = [H2S]K1/[H]
[S] =[HS]K2/[H]
[Cl] = Cc
●パラメーター:
・目的セル:Q=0
・変数セル:pH, pNH4, pH2S
・制約条件:Rn = (Cn+2Cs)-[NH3’]
Rs = (Cs+s)-[S’]
●ソルバーの手順:
作業列を作りセルに関係式を入れてCn=0から始める。このときpH, pNH4, pH2Sの初期値はすべて1とし、精度は1e-10としてソルバー解を求める。この作業列をコピー&ペーストで別の列に貼り付ける。Cnの値を順次大きくしながら、この作業を繰り返す。
結果を図-1~3に示します。
図-1(溶解度および化学種濃度(対数表示))
図-2(数式の表示)
図-3(結果の一例)
NiS(α)は強い酸性の溶液、濃いアンモニア溶液には沈殿しないことが分かります。
<<NiS(γ)の溶解度>>
Ksp=[Ni][S], pKsp=26.6 (NiS(γ):針ニッケル鉱)
その他の定数やソルバーの解法は、<<NiS(α)の溶解度>>の場合と同じです。
結果を図-4に示します。
図-4




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