アミノ酸は分子内にアミノ基とカルボキシ基の2種の官能基を持つ分子です。アミノ酸の一種であるグリシンおよびアスパラギン酸を例にして、アミノ酸の滴定曲線を示します。
●グリシン-塩酸塩の滴定曲線
グリシン(H2N・CH2・COOH)はモノアミノ・モノカルボン酸で、水溶液中で次のような平衡が成立します。
H3N⊕・CH2・COOH (H2G+)
⇅ Ka1
H3N⊕・CH2・COO⊖ +H⊕ (HG)
⇅ Ka2
H2N・CH2・COO⊖ +H⊕ (G-)
モル濃度Cao mol/L、試料体積V mLのグリシン-塩酸塩(HG・HCl)をモル濃度Cbomol/Lの水酸化ナトリウムで滴定することを考えます(滴下量:TmL)。グリシンの酸解離定数をpKa1=2.35, pKa2=9.78、水のイオン積をpKw=14.00とします(活量補正なし)。
<関係式>
H2G⊕ ⇆ H⊕ + HG
HG ⇆ H⊕ + G⊖
Ka1 = [H+][HG]/[H2G+]
Ka2 = [H+][G-]/[HG]
[G-]= CaoV/((V+T)(1+[H+]/Ka2+[H+]^2/(Ka2Ka1)))
[HG] = [H+][G-]/Ka2
[H2G+] = [H+][HG]/Ka1
[Cl-]=CaoV(V+T)
[Na+] = CboT/(V+T)
[H+]=10-pH
[OH-] = Kw/[[H+]
Q = [H+]-[OH-]+[Na+]-[G-]+[H2G+]-[Cl-]= 0
<滴定曲線>
0.01 mol/Lのグリシン塩酸塩(HG・HCl) 10 mLを0.01 mol/LのNaOHで滴定した場合の滴定曲線と化学種濃度の変化を図-1に示します。第1中和点でpHの大きなジャンプが見られ(pH=6.2)、また第2中和点で小さなジャンプが見られます(pH=10.6)。最初のジャンプは-COOH → -COO- + H+ の解離、二番目のジャンプは-NH3+ → -NH2+ H+の解離によるものです。
図-1
<エクセルシート>
エクセルシートの作成には「二分法」を用いました。二分法のやり方は従来通りですが、電荷の状態に注意してください。エクセルシートの抜粋を図-2に示します。
図-2
●アスパラギン酸-塩酸塩の滴定曲線
アスパラギン酸(HOOC・CH(NH2)・CH2・COOH)はモノアミノ・ジカルボン酸です。
アスパラギン酸(H2A)は次のような平衡が成立します
HOOCCH(NH3⊕)CH2COOH (H3A+)
⇅ Ka1
⊖OOCCH(NH3⊕)CH2COOH+ H⊕ (H2A)
⇅ Ka2
⊖OOCCH(NH3⊕)CH2COO⊖+ H⊕ (HA-)
⇅ Ka3
⊖OOCCH(NH2)CH2COO⊖+ H⊕ (A2-)
アスパラギン酸-塩酸塩(H2A・2HCl)をNaOHで滴定したときの滴定曲線を作成します。
H2A・HClのモル濃度をCao mol/L、試料体積をV mL、水酸化ナトリウムのモル濃度をCbo mol/L、滴下量をT mLとします。また、酸解離定数をpKa1=1.95, Ka2=3.71, Ka3=9.96, 水のイオン積をKw=14.00とします(活量補正なし)。
<関係式>
H3A⊕⇆ H⊕ + H2A
H2A ⇆ H⊕+ HA⊖
HA⊖⇆ H⊕ + A2⊖
Ka1 = [H+][H2A]/[H3A+]
Ka2 =[H+][HA-]/[H2A]
Ka3 =[H+][A2-]/[HA-]
[A2-] = CaoV/((V+T)(1+[H+]/Ka3+[H+]^2/(Ka3Ka2)+[H+]^3/(Ka3Ka2Ka1)))
[HA-] = [H+][A2-]/Ka3
[H2A]= [H+][HA-]/Ka2
[H3A+] = [H+][H2A]/Ka1
[Cl-]=CaoV(V+T)
[Na+] = CboT/(V+T)
[H+]=10-pH
[OH-] = Kw/[[H+]
Q = [H+]-[OH-]+[Na+]-2[A2-]-[HA-]+[H3A+]-[Cl-]= 0
<滴定曲線>
0.01 mol/Lのアスパラギン酸-塩酸塩(H2A・2HCl) 10 mLを0.01 mol/LのNaOHで滴定した場合の滴定曲線を図-3に示します。滴定曲線を図-3に示します。第2中和点(pH=6.8)でpHの大きなジャンプが見られます。
図-3
<エクセルシート>
作成したエクセルシートの抜粋を図-4に示します。




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