前回に引き続き、2種類の酸を混合した溶液の滴定曲線を作成します。リン酸と塩酸の混合溶液をNaOHで滴定するときの滴定曲線を、レビ法を用いて描きます。

 

Cao mol/Lのリン酸(H3PO4H3A)Cco mol/Lの塩酸(HCl)を含む溶液V mLCbomol/Lの水酸化ナトリウム(NaOH)で滴定する場合を考えます。NaOHの滴下量をT mLとし、またリン酸の酸解離定数をKa1, Ka2, Ka3とします。

滴定溶液中の平衡反応およびその平衡定数は、次のように表されます([ ]内の電荷の記号は省略)

 

Ka1=[H][H2A]/[H3A]

Ka2=[H][HA]/[H2A]

Ka3=[H][A]/[HA]

Kw =[H][OH]

 

物質バランスから、

Ca=[A][HA][H2A][H3A]

= [A](1[H]/Ka3[H]2/(Ka3Ka2)[H]3/(Ka3Ka2Ka1))

= CaoV/(V+T)

Cc = [Cl] = CcoV/(V+T)

Cb = [Na] = CboT/(V+T)

ここで、Ca, Cc, Cbはそれぞれ被滴定溶液中のリン酸、塩酸およびNaOHの全濃度。

 

被滴定溶液中の化学種濃度は、

[H] = 10-pH

[OH] = Kw/[[H]

[A] = Caof0V/(V+T)

[HA] = Caof1V/(V+T)

[H2A]=Caof2V/(V+T)

[H3A] = Caof3V/(V+T)

[Cl] = CcoV/(V+T)

[Na] = CboT/(V+T)

 

fnをリン酸の化学種, HnA (n=3~0)の存在分率とすると、

α = 1[H]/Ka3[H]2/(Ka3Ka2)[H]3/(Ka3Ka2Ka1)

f0 = [A]/Ca= 1/α  (Hの数は0、電荷は-3)

f1 = [HA]/Ca= [H]/(K3α)  (Hの数は1、電荷は-2)

f2 = [H2A]/Ca=[H]2/(K3K2α)  (Hの数は2、電荷は-1)

f3 = [H3A]/Ca= [H]3/(K3K2K1α)  (Hの数は3、電荷は0)

 

電荷バランスから、

Q[H][OH][Na]3[A]2[HA][H2A][Cl] = 0

 

Δ = [H+][OH-]とすると、

ΔCboT/(V+T)3Caof0V/(V+T)2Caof1V/(V+T)Caof2V/(V+T)CcoV/(V+T)=0

両辺に(V+T)を掛けて、

Δ(V+T)CboT3Caof0V2Caof1VCaof2VCcoV= 0

TVで整理して、

T(ΔCbo)V(ΔCao(3f02f1f2)Cco) = 0

 

したがって、

T = V(Cao(3f02f1f2)Cco-Δ)/(Cbo+Δ)

この式がpHから滴下量(T mL)を求める式となります。

 

Cao=0.05 mol/LH3PO4Cco=0.1 mol/LHClを含む溶液V=10 mLをCbo=0.1 mol/LNaOHで滴定したときの滴定曲線を-1に示します(pKa1=2.15, pKa2=7.20, pKa3=12.38、活量係数は無視)

第1終点までの滴下量をT1 mLおよび最初から第2終点までの滴下量をT2 mLとすると、

第1終点までに要したNaOHの物質量CboT1 は、塩酸およびリン酸H3PO4H2PO4まで(リン酸は1価として)中和されたときの物質量に相当します

CboT1=(Cco Cao)V
また、第2終点までに要したNaOHの物質量CboT2 塩酸およびリン酸H3PO4HPO42-まで(リン酸は2価として)中和されたときの物質量に相当します

CboT2=(Cco 2Cao)V

したがって、リン酸および塩酸の濃度は、
リン酸:Cao = Cbo(T2T1)/V

塩酸 Cco= Cbo(2T1T2)/V

となります。 

-1

 2020-04-05-fig1

 

また、エクセルシート(レビ法使用)の抜粋を-2に示します。

-2

2020-04-05-fig2