今回はアンモニア(NH3)およびその塩を例に、対数濃度図を用いてpHを求めます。


<<
アンモニアおよび塩化アンモニウム>>

0.01 mol/Lのアンモニア(NH3, Kn=9.25)0.01 mol/Lの塩化アンモニウム(NH4Cl)の対数濃度図を作成してpHを求めます。対数濃度図の作成方法は前回(2020/11/15)の酢酸、酢酸ナトリウムの場合と同様です。

<関係式> (2020/10/25, 2020/11/01を参照)

Cn mol/Lのアンモニア(NH3)の関係式は、

Kn = [H][NH3]/[NH4]

Kw = [H][OH]

Cn = [NH3][NH4]

[H][NH4] = [OH]

[H] = 10^-pH

[OH] = Kw/[H]

[NH3] = Cn/(1+[H]/Ka)

[NH4] = [H][NH3]/Ka

Cc mol/Lの塩化アンモニウム(NH4Cl)の関係式は、

Kn = [H][NH3]/[NH4]

Kw = [H][OH]

Cc = [NH3][NH4]

Cc = [Cl]

[H][NH4] = [OH][Cl]

[H] = 10^-pH

[OH] = Kw/[H]

[NH3] = Cc/(1+[H]/Ka)

[NH4] = [H][NH3]/Kn

<作成方法>

「酢酸および酢酸ナトリウム」で述べた方法と同じです。具体的には、酢酸のエクセルシート(2020/11/15の図-1)Ka, Caの値をKn, Cnの値に置き替えるだけです。

作成した対数濃度図を-に示します。図において黒色の実線(―:H+)log[H]を、黒色の破線(…:OH-)log[OH]を、緑色の実線(―:NH4+)log[NH4]を、青色の破線(…:NH3)log[NH3]を、それぞれ表しています。

-

 2020-11-22-fig1

<pHの求め方>

アンモニアの場合、電荷収支式から、

[NH4] = [OH][H]

もし、[OH]>>[H]とすると、

[NH4] = [OH]

log[NH4] = log[OH]

この式は、-でいうと黒色の破線(…:OH-)と緑色の実線(―:NH4+)の交点(T)を表しています。-から明らかの様に(log[OH]log[H])>1.3したがってT点のpHが求めるpHということになります。このpHはおよそ10.6です。


塩化アンモニウムの場合、
電荷収支式と物質収支式から、

[NH3] = [H][OH]

もし、[H]>>[OH]とすると、

[NH3] = [H]

log[NH3] = log[H]

この式は、-でいうと黒色の実線(―:H+)と青色の破線(…:NH3)の交点(U)を表しています。-から明らかの様に(log[H]log[OH])>1.3したがってU点のpHが求めるpHということになります。このpHはおよそ5.6です。


<<
酢酸アンモニウム>>

0.01 mol/Lの酢酸アンモニウム(NH4A)の対数濃度図を作成し、pHを求めます。弱酸-弱塩基の塩である酢酸アンモニウムの場合、対数濃度図は酢酸およびアンモニア両方に関する化学種の図示が必要です。

<関係式> (2020/11/08を参照)

Cs mol/Lの酢酸アンモニウム(NH4A)の関係式は、

Kn = [H][NH3]/[NH4]

Ka = [H][A]/[HA

Kw = [H][OH]

Cs = [NH3][NH4]

Cs = [A][HA]

[H][NH4] = [OH][A]

[H] = 10^-pH

[OH] = Kw/[H]

[A] = Cs/(1+[H]/Ka)

[HA] = [H][A]/Ka

[NH3] = Cs/(1+[H]/Kn)

[NH4] = [H][NH3]/Kn

<作成方法>

「酢酸」および「アンモニア」で作ったエクセルシートをそのまま合体させます。このシートから対数濃度図を作成します。

作成した対数濃度図を-に示します。

-

 2020-11-22-fig2

<pHの求め方>

プロトン条件式(2020/11/08)から、

[H][HA] = [OH][NH3]

[HA]>>[H]かつ[NH3]>>[OH]ならば、

[HA] = [NH3]

log[HA] = log[NH3]

この式は、-でいうと黄色の実線(―:HA)と青色の破線(―:NH4+)の交点(V)の交点(T)を表しています。-から明らかなように[HA]>>[H]かつ[NH3]>>[OH]なので[HA] = [NH3]が成立します。

したがってT点のpHが求めるpHということになります。このpHはおよそ7.0です。


<<
フッ化アンモニウム>>

0.01 M, 0.001 M, 0.0001 Mのフッ化アンモニウム(NH4F, pKa=3.17)について対数濃度図を作成します(図-3-(a), -(b), -(c))

-3-(a)
2020-11-22-fig3-a

-3-(b)
2020-11-22-fig3-b

-3-(c)
2020-11-22-fig3-c

<pHの求め方>

プロトン条件式は、次の通りです。

[H][HF] = [OH][NH3(*1)

(*1) 対数濃度図から、log[H]log[HF]ならびに log[OH]log[NH3]の大小関係を見る。それぞれが互いに1.0以上離れていれば(=非常に離れている)pHの許容差約0.02で小さいほうの濃度は無視できる。また、0.23以上離れていれば(=かなり離れている)pHの許容差約0.1で小さいほうの濃度は無視できる。


0.01 M NH
4F
の場合、-3-(a)から明らかなように [NH3]>>[OH]なので[H][HF] = [NH3]が成立します。つまり、log([H][HF])の線とlog[NH3]の線の交点のpHが溶液のpHです。

しかし[H][HF]よりかなり小さいので[H] を無視すれば、log[HF]の線とlog[NH3]の線の交点から、おおよそH=6.2くらいと見当をつけることができます。


0.001 M NH4Fの場合、図-3-(b)から [NH3]>>[OH]なので、[H]+[HF] = [NH3] が成立します。

つまり、log([H][HF])の線とlog[NH3]の線の交点のpHが溶液のpHです。log[H]の線とlog[HF]の線が接近しているので、図から直接的にpHを求めることは困難です。(*2)

(*2)このような場合、2020/11/08の近似式(a)[H] = ((KwKnCs)/(1Cs/Ka)) を用いると、pH=6.3


0.0001 M NH4F
の場合、-3-(c)から、[H]+[HF] = [OH]+[NH3]、つまりlog([H][HF])の線とlog([OH][NH3])の線の交点のpHが溶液のpHです。

しかし[HF][H]よりかなり小さく、また[OH][NH3]よりかなり小さいので、log[H]log[NH3]の線の交点から、おおよそH=6.6くらいと見当をつけることができます。


<<
ジクロロ酢酸アンモニウム>>

0.01 Mジクロロ酢酸アンモニウム(pKa=1.1)の場合(-)[NH3]>>[OH]なので、[H][HA] = [NH3]、つまりlog([H][HA])log[NH3]の交点を求める必要があります。しかし[HA][H]よりかなり小さいので、[HA]を無視すればlog[H]log[NH3]の交点から、おおよそpH=5.6くらいと見当をつけることができます。

-

2020-11-22-fig4