前回(2021/03/21)は硫酸濃度を変えたときのpHと化学種濃度の変化を調べました。今回は一定量の硫酸に水酸化ナトリウムを添加したときのpHと化学種濃度の変化について、活量係数補正を行って調べます。

硫酸の解離反応は次の通り。
H2SO4 → H+
HSO4- 1段目(完全解離)
HSO4-
H+ SO42- 2段目

2段目の熱力学的酸解離定数をK2o, 水のイオン積をKwoとし、活量係数γi拡張デバイヒュッケル式を用います(イオン強度µ)。溶液中の
H2SO4の濃度をCa mol/L, 水酸化ナトリウムの濃度をCb mol/Lとすると、関係式は次の通り。

・平衡定数:
K2 = K2º/(
γHγSO4/γHSO4)
Kw = Kwº/(
γHγOH)
・活量係数:
log
γH= 0.51µ/(1+2.95µ)
log
γOH= 0.51µ/(1+1.15µ)
log
γHSO4= 0.51µ/(1+1.48µ)
log
γSO4= 0.51×4µ/(1+1.31µ)
µ = ([H+]
[OH-]4[SO42-][HSO4-][Na+])/2
・物質収支:
Ca = [SO42-]
[HSO4-]
Cb = [Na+]
・電荷収支:
Q = [H+]
[OH-]2[SO42-][HSO4-][Na+] = 0
・化学種濃度:
[H+]º = [H+]
γH
pHc = pHº
logγH

[H+] = 10^pHc
[OH-] = [H+]/Kw
[SO42-] = Ca/(1
[H+]/K2)
[HSO4-] = [SO42-][H+]/K2
[Na+] = Cb
これらの関係式から、硫酸溶液にNaOHを加えた溶液について
ソルバーを用いてCa, Cb, pHº, 化学種濃度の関係を求めることができます。

例として、Ca=0.05 mol/Lの硫酸溶液にNaOHを加えてCb mol/LとしたときのCb, pHºおよび化学種濃度([HSO4-], [SO42-])の関係を求めます。 pK2o=2.00, pKwo=14.00 とし、またNaOHの添加による溶液の体積変化はないものとします。
エクセル表の作成
目的セル:Q=0
変数セル:Cb, μo
制約条件:μ-μo=0
としてソルバー解を求めました。結果および計算式の抜粋を-に示します(*1)
(*1) ここでは、pHo与件Cb変数としてソルバーを実行した。もちろん逆にしてもかまわないが、pHºを与件とした方がグラフでなめらかな曲線を描くのに見当がつけやすい。

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2021-03-28-fig1

CbpHoの関係
上記のソルバーの計算結果をエクセル散布図にして、NaOHの濃度CbpHoの関係を示します(-)。図中には活量係数を考慮しない場合も示しました(*2)
(*2) この計算では、活量係数補正を行ったのでソルバーを用いたが、活量係数補正を行わない場合は、二分法レビ法でも対応が可能である。

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2021-03-28-fig2

図-2は固体のNaOHによる硫酸の滴定曲線と考えることもできます(つまり、被滴定溶液の体積変化がないときの滴定曲線)。もしNaOHの添加によって溶液の体積が変化することを考慮に入れて計算すると通常の滴定曲線となります。この図から明らかなように、活量係数の補正は滴定における当量点の検出にはほとんど影響を与えないことが分かります。

Cbと化学種濃度の関係
0.05 mol/Lの硫酸溶液にNaOHを加えてCb mol/LとしたときのCbと化学種濃度([HSO4-], [SO42-])の関係を図示します(-)。図中には活量係数を考慮しない場合も入れました。活量係数による補正の有無により[HSO4-], [SO42-]の濃度分布が異なることが分かります。

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2021-03-28-fig3

pHoと化学種濃度の関係
0.05 mol/Lの硫酸溶液にNaOHを加えてCb mol/LとしたときのpHoと化学種濃度([HSO4-], [SO42-])の関係を図示します(-4)

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2021-03-28-fig4