これまで(2021/05/02, 2021/05/09)に引き続き滴定誤差について考察します。今回は弱酸の混合物の滴定における滴定誤差についてです。
1価の弱酸(HX, HY)の混合物
Cxo mol/Lの1価弱酸(HX, 酸解離定数Kx)およびCyo
mol/Lの1価弱酸(HY, 酸解離定数Ky)を含むVa mLの混合酸をCbo
mol/LのNaOHで滴定する場合(滴下量:Vb
mL)、を考えます。このとき、滴定曲線は次式で与えられます(2021/04/25)。
Vb
= Va(Cxofx0+Cyofy0-Δ)/(Cbo+Δ)
ここで、Δ=[H]-[OH]
fx0
= [X]/Cx = 1/(1+[H]/Kx)
fy0
= [Y]/Cy = 1/(1+[H]/Ky)
ここで、Kx>Kyとすると、滴定曲線において最初「(HX⇒X)の終点」(第1終点)が現れ、次いで「(HX+HY⇒X+Y)の終点」(第2終点)が現れます(*1)。
(*1) Kx, Ky相互の大きさ次第で明確な終点を示さない場合もある。
HXの滴定率(φ1)を、
φ1 = CboVb/(CxoVa)
HX+HYの滴定率(φ2)を、
φ2 = CboVb/((Cxo+Cyo)Va)
とすると、
φ1 = (Cbo/Cxo)(Cxofx0+Cyofy0-Δ)/(Cbo+Δ)
φ2 = (Cbo/(Cxo+Cyo))(Cxofx0+Cyofy0-Δ)/(Cbo+Δ)
したがって、第1終点の滴定誤差(E1)は、
E1 =φend1-1=
(Cbo/Cxo)(Cxofx0+Cyofy0-Δend1)/(Cbo+Δend1)-1 …①
第2終点の滴定誤差(E2)は、
E2 =φend2-1=
(Cbo/(Cxo+Cyo))(Cxofx0+Cyofy0-Δend2)/(Cbo+Δend2)-1 …②
となります(*2)。
(*2) 第1当量点では、VaCxo = Veq1Cbo
第1終点では、Vend1 = Va(Cxofx0+Cyofy0-Δend1)/(Cbo+Δend1)
したがって第1終点の滴定誤差(E1)は、
E1 = (Vend1-Veq1)/Veq1 = Vend1/Veq1-1
= {Va(Cxofx0+Cyofy0-Δend1)/(Cbo+Δend1)}/(VaCxo/Cbo)-1
= (Cbo/Cxo)(Cxofx0+Cyofy0-Δend1)/(Cbo+Δend1)-1
第2当量点では、Va(Cxo+Cyo)= Veq2Cbo
第2終点では、Vend2 = Va(Cxofx0+Cyofy0-Δend2)/(Cbo+Δend2)
したがって第2終点の滴定誤差(E2)は、
E2 = (Vend2-Veq2)/Veq2 = Vend2/Veq2-1
= {Va(Cxofx0+Cyofy0-Δend2)/(Cbo+Δend2)}/{Va(Cxo+Cyo)/Cbo}-1
= (Cbo/(Cxo+Cyo))(Cxofx0+Cyofy0-Δend2)/(Cbo+Δend2)-1
例題1 0.01 mol/L 酢酸および(1) 0 (2) 0.0001 (3) 0.001 (4) 0.01 mol/L ホウ酸(pKa=9.24)を含む混合溶液を0.01 mol/L NaOHによって滴定するとき、pHと酢酸の滴定誤差の関係は?
①式および②式について、計算列(図1エクセル表のC列)においてpH=2におけるE1%を求め、次いでデータテーブル機能を用いてpHを2~12と変化させたときのE1%を求めた。計算結果およびpHとE1%の関係を図-1に示す。
例題2 例題1において 酢酸の終点(第1終点)が当量点から±0.3 pH以内であるときの滴定誤差(E%)は?
例題1で求めたE1%について、pH, Cyoに関するデータテーブル(F4:J19)を作り、各ホウ酸濃度(Cyo)においてソルバー機能を用いてE1%=0となるpHを求め(pHeq)、pHend (=pHeq±0.3)におけるE1%を求めた。結果を図-2に示す。ホウ酸濃度(Cyo)が高くなると酢酸の滴定誤差が大きくなることが分かる。たとえば、ホウ酸を含まないときはE%は±0.05%であるが、ホウ酸0.001 mol/Lを含むと、±0.27%となる。
1価の弱酸(HX)と2価の弱酸(H2Y)の混合物
Cxo
mol/Lの1価弱酸(HX, 酸解離定数Kx)およびCyo
mol/Lの2価弱酸(HY, 酸解離定数 Ky1, Ky2)を含むVa mLの混合酸をCbo
mol/LのNaOHで滴定する場合(滴下量:Vb
mL)、を考えます。このとき、滴定曲線は次式で与えられます(2021/04/25)。
Vb
= Va(Cxofx0+Cyo(2f y0+f y1)-Δ)/(Cbo+Δ)
ここで、Δ=[H]-[OH]
fx0
= [X]/Cx = 1/(1+[H]/Kx)
fy0
= [Y]/Cy = 1/(1+[H]/Ky2+[H]^2/(Ky2Ky1))
fy1 = [HY]/Cy = fy0[H]/Ky2
ここで、Kx>Ky1>Ky2とすると、滴定曲線において最初「(HX⇒X)の終点」(第1終点)が現れ、次いで「(HX+H2Y⇒X+HY)の終点」(第2終点)が現れ、三番目に「(HX+H2Y⇒X+Y)の終点」(第3終点)が現れます(*3)。
(*3) もちろん、Kx, Ky1, Ky2相互の大きさ次第で明確な終点を示さない場合もある。
第1終点の滴定誤差(E1)は、
E1 =φend1-1=
(Cbo/Cxo)(Cxofx0+Cyo(2fy0+fy1)-Δend1)/(Cbo+Δend1)-1 …③
第2終点の滴定誤差(E2)は、
E2 =φend2-1=
(Cbo/(Cxo+Cyo))(Cxofx0+Cyo(2fy0+fy1)-Δend2)/(Cbo+Δend2)-1 …④
第3終点の滴定誤差(E2)は、
E3 =φend3-1= (Cbo/(Cxo+2Cyo))(Cxofx0+Cyo(2fy0+fy1)-Δend3)/(Cbo+Δend3)-1 …⑤
となります(*4)。
(*4) Kx, Ky1,
Ky2の大きさの順番が変わるとE1, E2,
E3の式も変わる。
A=(Cxofx0+Cyo(2fy0+fy1)-Δend)/(Cbo+Δend)とすると、
Ky1>Kx>Ky2ならば、E1=(Cbo/Cyo)A-1; E2=(Cbo/(Cyo+Cxo))A-1; E3=(Cbo/(2Cyo+Cxo))A-1
Ky1>Ky2>Kxならば、E1=(Cbo/Cyo)A-1; E2=(Cbo/(2Cyo))A-1; E3=(Cbo/(2Cyo+Cxo))A-1
となる。
例題3 0.01
mol/L フッ化水素酸(Ka=3.17)および(1) 0, (2) 5×10^-5, (3) 1×10^-4, (4) 2×10^-4 mol/L 炭酸(pK1=6.35,
pK2=10.33)の混合溶液を0.01 mol/L NaOHによって滴定するとき、pHとフッ化水素酸の滴定誤差の関係は?
③~⑤式について、計算列(図1エクセル表のC列)においてpH=2におけるE1%を求め、次いでデータテーブル機能を用いてpHを2~12と変化させたときのE1%を求めた。計算結果およびpHとE1%の関係を図-3に示す。炭酸濃度(Cyo)が高くなるとフッ化水素酸の滴定誤差が大きくなる。
例題4 例題3(1), (3)において、フッ化水素酸の終点(pHend)が当量点(pHeq)から±0.3 pH以内であるときの滴定誤差(E%)は?
図-3のエクセルシートのデータテーブルにおいて、
① ソルバーでE1% = 0となるようなpHを求め、このpHをpHeqとする。
② pHeqから±0.3 pHだけ離れたpHを求め、このpHをpHendとする。
③ pHendからE1%を求める。
結果を図-4に示す。
(答)
炭酸を含まないとき:E% =-0.009%~+0.009%
炭酸濃度1×10^-4 mol/Lのとき:E% =-0.034%~+0.027%




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