前回(2021/11/14)の続きです。強酸の強塩基による滴定において、滴定剤をある量加えたときのpHを、エクセルを用いて二分法によって求めます。
<<関係式>>(復習)
前回(2021/11/14)の復習です。「Cao mol/Lの塩酸 V mLをCbo mol/Lの水酸化ナトリウムで滴定する」場合を考えます(滴下量:T mL)。滴定中の溶液に存在するイオンは、H+, OH-, Na+,
Cl-の4種で、それらのモル濃度(mol/L)をそれぞれ[H], [Na], [OH], [Cl]とすると、滴定の各段階においてNa+およびCl-は中和反応には関係ないので、[Na], [Cl]とCao, Cboの間には、物質バランスから、
[Na] = CaoV/(V+T)
[Cl] = CboT/(V+T)
という関係が得られます。
また、電荷バランスから、
[H]+[Na] = [OH]+[Cl]
が成立します。
さらに、水のイオン積をKwとすると、Kw=[H][OH]なので、
[OH] = Kw/[H]
これらが強酸強塩基滴定における基本の関係式となります。
これらの式を変形すると、
[H]+[Na] = Kw/[H]+[Cl]
[H]-Kw/[H]+[Na]-[Cl] = 0
この式の左辺をQと置くと、
Q=0
となります。
Q=f(pH)とすると、
f(pH) = 10^-pH-Kw/10^-pH+[Na]-[Cl]
df(pH)/dpH =-ln(10)(10^-pH+Kw10^pH)<0
したがって、f(pH)は単調減少関数です。そして、f(a)>0, f(b)<0であるとき、aとbの中間のどこかにかならずf(pH)=0となるpHが一つ存在します。したがって、Q=0を解くのに二分法を用いることができます。
<<二分法のやり方>>(復習)
エクセルを用いて、二分法によりこの滴定途中(滴下量:T mL)の被滴定溶液のpHを求めます。近似解を求める具体的な操作手順は次の通りです。この操作はエクセルでIF関数を用いることがポイントです。
<初期値の付与>
・pHの初期値a0を与える。a0
・pHの初期値b0を与える。b0
・a0, b0の中点、m0を求める。m0=(a0+b0)/2
・m0に対するf(m0)の値を求める。
<繰返し1回目>
① f(m0)<0ならば、a1=a0、そうでなければ、a1=m0とする。
・a1=IF(f(m0)<0,
a0, m0)
② a1=m0ならば、b1=b0、そうでなければ、b1=m0とする。
・b1=IF(a1=m0,
b0, m0)
③ a1, b1の中点、m1を求める。m1=(a1+b1)/2
・m1=(a1+b1)/2
④ m1に対するf(m1)の値を求める。
<2回目>
① f(m1)<0ならば、a2=a1、そうでなければ、a2=m1とする。
・a2=IF(f(m1)<0,
a1, m1)
② a2=m1ならば、b2=b1、そうでなければ、b2=m1とする。
・b2=IF(a2=m1,
b1, m1)
③ a2, b2の中点、m2を求める。m2=(a2+b2)/2
・m1=(a1+b1)/2
④ m2に対するf(m2)の値を求める。
⋮
以下、これと同様の操作を繰り返す。
⋮
<n回目>
① f(mn-1)<0ならば、an=an-1、そうでなければ、an=mn-1とする。
・an=IF(f(mn-1)<0,
an-1, mn-1)
② an=mn-1ならば、bn=bn-1、そうでなければ、bn=mn-1とする。
・bn=IF(an=mn-1,
bn-1, mn-1)
③ an, bnの中点、mnを求める。mn=(an+bn)/2
・mn=(an+bn)/2
④ mnに対するf(mn)の値を求める
f(mn)≒0となったとき、mnが求める答えとなります。
以上、前回の復習です(動画はこちら)。
<<エクセルでの手順>>
具体的に、0.1 mol/LのNaOHによる0.1 mol/Lの塩酸20
mLの滴定において、NaOHの滴下量が10 mLのときのpHを、エクセルを用いて二分法で求めます。エクセルではまず滴定の条件を決める「条件表」を作り、これをもとに「二分法表」を作成します。作成した「条件表」「二分法表」を図-1に示します。
図-1
<「条件表」の作成>(図-1を参照)
(1) Kw, Cao, V, Cbo, Tの値をD4~D8のセルに入れる。(*1)
・ここでは、Tの値(D8)に10を入れる。
(*1) 一般に酸を塩基で滴定する場合、Cao, Cboは1 mol/L以下なので、この場合は初期値をa0=0, b0=14としてよい。これより濃い酸塩基の場合は、たとえば、a0=-2, b0=16などとする。
(2) V+T, [Cl],
[Na]を計算する。
・D9:=D6+D8
・D10:=D5*D6/D9
・D11:=D7*D8/D9
<「二分法表」の作成>(図-1を参照)
・0回目の操作(初期値を与える)
(3) pHの初期値a0,
b0をC16, E16に入れ、m0=(a0+b0)/2をD16に入れる。
・C16:=0
・D16:=(C16+E16)/2
・E16:=14
(4) 初期値について濃度に関する計算式をF16~J16に入れる。(*2)
・F16:=G16-H16-I16+J16
・G16:=10^(-D16)
・H16:=$D$4/G16
・I16:=$D$10
・J16:=$D$11
(*2) 「条件表」からセルをコピーする場合は、絶対参照にする($を付ける)ことに注意!
・1回目の操作
(5) 二分法の式をC17~E17のセルに入れる。
・C17:=IF(F16<0,C16,D16)
・D17:=(C17+E17)/2
・E17:=IF(C17=D16,E16,D16)
(6) G16~J16をG17~J17にコピーする。
・2回目~30回目の操作
(7) C17~J17をC46~J46までコピーする。(*3)
・範囲(C17:J17)を選択し、範囲右下隅の■を⊞にして46行目までドラッグ
(*3) pHの初期値をたとえば-2から16として、このときpHの範囲が10^-4以内になるためには、18×(1/2)^n=10^-4からn=17.5、つまり18回以上繰り返すと十分であることが分かる。
(8) 求めたpHの値を条件表にコピーする。
・D12:=D46
次の動画に詳しい手順を示します。
動画

コメント