化学を学び始めた頃よく疑問に思うのは、「酸素」はなぜ「酸の素」なのか? なぜ“酸”という漢字が用いられているのか? ということではないでしょうか。
酸素はフランス人の化学者ラボアジェによって命名されましたが、彼は誤解して「酸素は酸の素となる元素」であると考えてギリシャ語の「oxys」(酸)から「oxyge`ne」(酸素)と名付けました(フランス語では、酸・塩基の酸はラテン語由来の「acide」)。
後から分かったのですが、酸・塩基の性質に関与する元素は酸素ではなく水素です。酸は水素イオンを与える物質、塩基は水素イオンを受け取る物質です。
このラボアジェの間違いがことの発端です。
イギリスではフランス語に倣って「oxygen」としました(酸は「acid」)。ところがドイツでは「oxyge`ne」(酸素)を訳すとき、ドイツ語の「Saure」(酸)から「Sauerstoff」(酸素)としました。オランダではドイツ語からの翻訳で「zuur」(酸) →「zuurstof」(酸素)としました。
さて日本では江戸時代、蘭学者の宇田川榕菴(ようあん)がオランダ語の「zuur」を「酸」、「zuurstof」を「酸素」と訳しました。
したがって、ラボアジェの間違いがドイツ語、オランダ語へと流れて日本語の「酸」と「酸素」の混乱につながった、と言えるでしょう。
ちなみに、「酸化」は、フランス語では「oxydation」、英語では「oxydation」、ドイツ語は「Oxidation」、中国語では「「氧化」(氧は気の中のメが羊になった字)」です。
「酸」と「酸素」と「酸化」で混乱するのは日本語だけのようです。

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