2価の塩基である炭酸ナトリウムを塩酸で滴定する場合について、二分法を用いて理論的滴定曲線を作成します。
濃度Cso mol/Lの炭酸ナトリウム V mLを濃度Cco mol/Lの塩酸で滴定します。滴定剤の添加量をT mLとし、炭酸の酸解離定数をK1, K2, 水のイオン積をKwとします。
<<関係式>>
H2CO3 ⇆ H+ + HCO3- K1 =
[H][HCO3]/[H2CO3]
HCO3- ⇆ H+ + CO32- K2 =
[H][CO3]/[HCO3]
H2O ⇆ H+ + OH- Kw = [H][OH]
Na2CO3 → 2Na+ + CO32-
HCl → H+ + Cl-
物質バランスから、被滴定溶液中の炭酸ナトリウム濃度をCsおよび塩酸濃度をCcとすると、
炭酸に関して、
Cs = CsoV/(V+T)
= [CO3]+[HCO3]+[H2CO3]
= [CO3](1+[H]/K2+[H]2/(K2K1))
= [CO3]α
ここで、α= 1+[H]/K2+[H]2/(K2K1)
また、Na+, Cl-に関して、
Cs = [Na]/2
Cc = CcoT/(V+T) = [Cl]
したがって、被滴定溶液中の化学種濃度は、
[H] = 10-pH
[OH] = Kw/[H]
[CO3] = Cs/α
[HCO3] = [H][CO3]/K2
[H2CO3] = [H][HCO3]/K1
[Na] = 2Cs
[Cl] = Cc
また、電荷バランスから、
Q = [H]-[OH]-2[CO3]-[HCO3]+[Na]-[Cl]= 0
<<エクセルシート>>
Cso=0.1 mol/Lの炭酸ナトリウム, V=10
mLをCco=0.1 mol/LのHClで滴定し、滴下量をT mLとします。また、pK1=6.35, pK2=10.33,
pKw=14.00とします。
<条件表の作成>
(1) pK1, pK2, pKwをE4, E5, E6に入れ, Cso, V, CcoをD7, D8, D9に入れる。
(2) T(D10)に"0"を入れる。
(3) K1, K2, Kw, V+T, Cs,
Ccの計算式をD4, D5, D6, D11, D12, D13に入れる。
・D4=10^(-E4) {K1=10^-pK1
}
・D5=10^(-E5) {K2=10^-pK2
}
・D6=10^(-E6) {Kw=10^-pKw
}
・D11=D8+D10 {V+T}
・D12=D7*D8/D11 {Cs=CsoV/(V+T)}
・D13=D9*D10/D11 {Cc=CcoT/(V+T)}
<「二分法表」の作成>
(4) 初回(18行目): pHの初期値a0, b0をC18, E18に入れ、m0の計算式をD18に入れる。
・C18=0
・D18=(C18+E18)/2 {m0=(a0+b0)/2}
・E18=14
(5) 初期値に対して濃度に関する計算式をF18~L18に入れる。
・F18=G18-H18-2*J18-K18+M18-N18 {Q=[H]-[OH]-2[CO3]-[HCO3]+[Na]-[Cl]}
・G18=10^(-D18) {[H]=10^(-pH)}
・H18=$D$6/G18 {[OH]=Kw/[H]}
・I18=1+G18/$D$5+G18^2/($D$5*$D$4) {α=1+[H]/K2+[H]^2/(K1K2)}
・J18=$D$12/I18 {[CO3]=Cs/α}
・K18=G18*J18/$D$5 {[HCO3]=[H][CO3]/K2}
・L18=G18*K18/$D$4 {[H2CO3]=[H][HCO3]/K1}
・M18=2*$D$12 {[Na]=2Cs}
・N18=$D$13 {[Cl]=Cc}
(6) 繰り返し1回目(19行目): 二分法のロジック式をC19~E19に入れ、濃度に関しては初回の計算式をコピーする。
・C19=IF(F18<0,C18,D18) {a1=IF(Q0<0,
a0, m0)}
・D19=(C19+E19)/2 {m1=(a1+b1)/2}
・E19=IF(F18<0,D18,E18) {b1=IF(Q0<0,
m0, b0)}
・範囲(F18:N18)を選択し、F19:N19までコピーする。
(範囲の右下隅の■を⊞にして19行目までドラッグ)
(7) 繰り返し2~30回目: 範囲C19:N19を選択し、C48:N48までコピーする。
(範囲の右下隅の■を⊞にして48行目までドラッグ)
(8) 求めたpHの値(D48)を条件表のD14にコピーする。
・D14=D48
これで条件表、二分法表が完成です(図-1のC列~N列)。
<データテーブルの作成>
(9) P列にTの値を0.1 mLきざみでT=0~40 mLまでいれる。
・P5に"0", P6に"0.1"を入れる。
・範囲(P5:P6)を選択し、範囲右下隅の■を⊞にして405行目までドラッグする。
(10) 二分法表(T=0)のpH(D14)をQ5にコピーする。
・Q5=D14
(11) データテーブルの作成範囲(P5:Q405)を指定する(見出しは指定しない!)。
(12) データテーブルを作成する。
・メニューバー:「データ」
・ツールバー:「What-If分析」⇒「データテーブル」⇒「データテーブル」ダイアログボックスが出る ⇒「列の代入セル」に”D10”(滴下量T)を指定する(「行の代入セル」は空欄のまま) ⇒「OK」
これで、データテーブルが完成です(図-1のP, Q列)。
<滴定曲線の作成>
(13) 見出しを含め範囲P2:Q405を指定する。
(14) 散布図を作成する。
・メニューバー:「挿入」
・ツールバー:「グラフ」⇒「散布図」⇒「散布図(平滑線)」⇒「OK」
(散布図は目的に応じて適当にカスタマイズしてください)
作成した滴定曲線の例を図-2に示します。
次の動画に滴定曲線の作成手順を示します。動画ではマレイン酸の滴定で作ったエクセルシート(2021-12-12)を利用し、これを修正して作成しました。
動画
次回はアミノ酸(グリシン塩酸塩)の滴定曲線の作り方です。


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