アミノ酸の1種であるグリシン(H2NCH2COOH)は分子内にアミノ基とカルボキシ基を1個ずつ持つモノアミノ・モノカルボン酸です。グリシン塩酸塩を水酸化ナトリウムで滴定する場合について、二分法を用いて理論的滴定曲線を作成します。   

濃度Cgoのグリシン塩酸塩(H2G+Cl-), V mLを濃度CboNaOHで滴定します。滴定剤の添加量をT mLとし、グリシンの酸解離定数をK1, K2, 水のイオン積をKwとします。   

<<関係式>> 
H2G+Cl- 
 H2G+ Cl-
H2G+
H+ HG  K1 = [H][HG]/[H2G]
HG
H+ G-  K2 = [H][G]/[HG]
    2022-01-16-fig0画像1
 H2O
H+ OH-  Kw = [H][OH]
NaOH
Na+ OH-   

物質バランスから、被滴定溶液中のグリシン, Cl-Na+濃度をそれぞれCg, Cc, Cbとすると、

グリシンに関して、
Cg = CgoV/(V+T)
  = [G]+[HG]+[H2G]
  = [G](1+[H]/K2+[H]2/(K2K1)) = [G]α
ここで、α= 1+[H]/K2+[H]2/(K2K1)
また、Cl-, Na+に関して、
Cc = Cg = [Cl]
Cb = CboT/(V+T)
   

したがって、被滴定溶液中の化学種濃度は、
[H] = 10
pH
[OH] = Kw/[H]
[G] = Cg/
α
[HG] = [H][G]/K2
[H2G] = [H][HG]/K1
[Cl] = Cg
[Na] = Cb
   

また、電荷バランスから、
Q = [H]
[OH][G][H2G][Cl][Na] = 0   

<<エクセルシート>
Cgo=0.1 mol/Lのグリシン塩酸塩 V=10 mLCbo=0.1 mol/LNaOHで滴定し、滴下量をT mLとします。また、pK1=2.35, pK2=9.78, pKw=14.00とします。
<条件表>
(1) pK1, pK2, pKwの値をE4, E5, E6に入れ、Cao, V, Cboの値をD7, D8, D9に入れる。
(2)
 T(D10)"0"を入れる。
(3)
 K1, K2, Kw, V+T, Ca, Cbの計算式をD4, D5, D6, D11, D12, D13に入れる。  ・
  ・D4=10^-E4 {K1=10^-pK1}
  ・D5=10^-E5 {K2=10^-pK2}
  ・D6=10^-E6 {Kw=10^-pKw}
  ・D11=D8+D10 {V+T}
  ・D12=D7*D8/D11 {Cg=
CgoV/(V+T)}
  ・D13=D9*D10/D11 {Cb = CboT/(V+T)]

<二分法表>
(4) 初回(18行目): pHの初期値a0, b0C18, E18に入れm0の計算式をD18に入れる。
  ・C18=0
  ・D18=(C18+E18)/2 {m0=(a0+b0)/2}
  ・E18=14
(5)
 初期値に対して、濃度に関する計算式をF18L18に入れる。
  F18=G18-H18-J18+L18-M18+N18
 {Q=[H]-[OH]-[G]+[H2G]-[Cl]+[Na]}
  ・G18=10^(-D18) {[H]=10^(-pH)}
  ・H18=$D$6/G18 {[OH]=Kw/[H]}
  ・I18=1+G18/$D$5+G18^2/($D$5*$D$4) {α=1+[H]/K2+[H]^2/(K2K1)}
  ・J18=$D$12/I18 {[G]=Ca/α}
  ・K18=G18*J18/$D$5 {[HG]=[H][G]/K2}
  ・L18=G18*K18/$D$4 {[H2G]=[H][HG]/K1}
  M18=$D$12 {[Cl]=Cb}
  ・N18=$D$13 {[Na]=Cb}   

(6) 繰り返し1回目(19行目): 二分法のロジック式をC19E19に入れ、濃度に関しては初回の計算式をコピーする。
  ・C19=IF(F18<0,C18,D18) {a1=IF(Q0<0, a0, m0)}
  ・D19=(C19+E19)/2 {m1=(a1+b1)/2}
  ・E19=IF(F18<0,D18,E18) {b1=IF(Q0<0, m0, b0)}
(7)
 範囲(F18:N18)を選択し、F19N19までコピーする。
  (範囲の右下隅の■をにして19行目までドラッグ)
(8)
 繰り返し230回目: 範囲C19:N19を選択し、C48N48までコピーする。
  (範囲の右下隅の■をにして48行目までドラッグ)
(9)
 D48が求めるpHである。求めたpHの値を条件表にコピーする。
  ・D14=D48   

これで、条件表、二分法表が完成です(-1C列~N)。   

<データテーブルの作成>
(10) P列に滴定量T mLの値を0.1 mLきざみで040 mLまでいれる。
  ・P5"0", P6"0.1"を入れる。
  ・範囲(P5:P6)を選択し、範囲右下隅の■をにして405行目までドラッグする。
(11)
二分法表(T=0)pH(D14)Q5にコピーする。
  ・Q5=D14
(12)
データテーブルの作成範囲(P5:Q405)を指定する。
(13)
データテーブルを作成する。
  ・メニューバー:「データ」
  ・ツールバー:「What-If分析」「データテーブル」ダイアログボックス 「列の代入セル」に”D10”(滴下量T)を指定する(「行の代入セル」は空欄のまま) ⇒OK」   

これで、滴定量T(mL)とpHのデータテーブルが完成です(-1のP, Q)。   

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2022-01-16-fig1
 

<滴定曲線の作成>
(14) 項目も含め、範囲P4:Q405を指定する。
(15)
散布図を作成する。
  ・メニューバー:「挿入」
  ・ツールバー:「グラフ」「散布図」「散布図(平滑線)⇒ OK
(散布図は目的に応じて適当にカスタマイズしてください)   

作成した滴定曲線の例を-に示します。   

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2022-01-16-fig2
 

次の動画滴定曲線の作成手順を示します。動画ではマレイン酸の滴定で作ったエクセルシート(2021-12-12)を利用し、これを修正してグリシン塩酸塩の滴定曲線を作成しました。   

動画

次回はアミノ酸(グルタミン酸)の滴定曲線の作り方です。