アミノ酸の1種であるグリシン(H2N・CH2・COOH)は分子内にアミノ基とカルボキシ基を1個ずつ持つモノアミノ・モノカルボン酸です。グリシン塩酸塩を水酸化ナトリウムで滴定する場合について、二分法を用いて理論的滴定曲線を作成します。
濃度Cgoのグリシン塩酸塩(H2G+Cl-), V mLを濃度CboのNaOHで滴定します。滴定剤の添加量をT mLとし、グリシンの酸解離定数をK1, K2, 水のイオン積をKwとします。
<<関係式>>
H2G+Cl- → H2G+
+ Cl-
H2G+ ⇆ H+ + HG K1 = [H][HG]/[H2G]
HG ⇆ H+ + G- K2 = [H][G]/[HG]

H2O ⇆ H+ + OH- Kw = [H][OH]
NaOH → Na+ + OH-
物質バランスから、被滴定溶液中のグリシン, Cl-, Na+濃度をそれぞれCg, Cc, Cbとすると、
グリシンに関して、
Cg = CgoV/(V+T)
= [G]+[HG]+[H2G]
= [G](1+[H]/K2+[H]2/(K2K1))
= [G]α
ここで、α= 1+[H]/K2+[H]2/(K2K1)
また、Cl-, Na+に関して、
Cc = Cg = [Cl]
Cb = CboT/(V+T)
したがって、被滴定溶液中の化学種濃度は、
[H] = 10-pH
[OH] = Kw/[H]
[G] = Cg/α
[HG] = [H][G]/K2
[H2G] = [H][HG]/K1
[Cl] = Cg
[Na] = Cb
また、電荷バランスから、
Q = [H]-[OH]-[G]+[H2G]-[Cl]+[Na] = 0
<<エクセルシート>>
Cgo=0.1 mol/Lのグリシン塩酸塩 V=10 mLをCbo=0.1 mol/LのNaOHで滴定し、滴下量をT mLとします。また、pK1=2.35, pK2=9.78,
pKw=14.00とします。
<条件表>
(1) pK1, pK2, pKwの値をE4, E5, E6に入れ、Cao, V, Cboの値をD7, D8, D9に入れる。
(2) T(D10)に"0"を入れる。
(3) K1, K2, Kw, V+T, Ca,
Cbの計算式をD4, D5, D6, D11, D12, D13に入れる。 ・
・D4=10^-E4 {K1=10^-pK1}
・D5=10^-E5 {K2=10^-pK2}
・D6=10^-E6 {Kw=10^-pKw}
・D11=D8+D10 {V+T}
・D12=D7*D8/D11 {Cg=CgoV/(V+T)}
・D13=D9*D10/D11 {Cb = CboT/(V+T)]
<二分法表>
(4) 初回(18行目): pHの初期値a0, b0をC18, E18に入れ、m0の計算式をD18に入れる。
・C18=0
・D18=(C18+E18)/2 {m0=(a0+b0)/2}
・E18=14
(5) 初期値に対して、濃度に関する計算式をF18~L18に入れる。
・F18=G18-H18-J18+L18-M18+N18 {Q=[H]-[OH]-[G]+[H2G]-[Cl]+[Na]}
・G18=10^(-D18) {[H]=10^(-pH)}
・H18=$D$6/G18 {[OH]=Kw/[H]}
・I18=1+G18/$D$5+G18^2/($D$5*$D$4) {α=1+[H]/K2+[H]^2/(K2K1)}
・J18=$D$12/I18 {[G]=Ca/α}
・K18=G18*J18/$D$5 {[HG]=[H][G]/K2}
・L18=G18*K18/$D$4 {[H2G]=[H][HG]/K1}
・M18=$D$12 {[Cl]=Cb}
・N18=$D$13 {[Na]=Cb}
(6) 繰り返し1回目(19行目): 二分法のロジック式をC19~E19に入れ、濃度に関しては初回の計算式をコピーする。
・C19=IF(F18<0,C18,D18) {a1=IF(Q0<0,
a0, m0)}
・D19=(C19+E19)/2 {m1=(a1+b1)/2}
・E19=IF(F18<0,D18,E18) {b1=IF(Q0<0,
m0, b0)}
(7) 範囲(F18:N18)を選択し、F19:N19までコピーする。
(範囲の右下隅の■を⊞にして19行目までドラッグ)
(8) 繰り返し2~30回目: 範囲C19:N19を選択し、C48:N48までコピーする。
(範囲の右下隅の■を⊞にして48行目までドラッグ)
(9) D48が求めるpHである。求めたpHの値を条件表にコピーする。
・D14=D48
これで、条件表、二分法表が完成です(図-1のC列~N列)。
<データテーブルの作成>
(10) P列に滴定量T mLの値を0.1 mLきざみで0~40 mLまでいれる。
・P5に"0", P6に"0.1"を入れる。
・範囲(P5:P6)を選択し、範囲右下隅の■を⊞にして405行目までドラッグする。
(11) 二分法表(T=0)のpH(D14)をQ5にコピーする。
・Q5=D14
(12) データテーブルの作成範囲(P5:Q405)を指定する。
(13) データテーブルを作成する。
・メニューバー:「データ」
・ツールバー:「What-If分析」⇒「データテーブル」⇒ダイアログボックス ⇒「列の代入セル」に”D10”(滴下量T)を指定する(「行の代入セル」は空欄のまま) ⇒「OK」
これで、滴定量T(mL)とpHのデータテーブルが完成です(図-1のP, Q列)。
図-1
<滴定曲線の作成>
(14) 項目も含め、範囲P4:Q405を指定する。
(15) 散布図を作成する。
・メニューバー:「挿入」
・ツールバー:「グラフ」⇒「散布図」⇒「散布図(平滑線)」⇒ OK
(散布図は目的に応じて適当にカスタマイズしてください)
作成した滴定曲線の例を図-2に示します。
図-2
次の動画に滴定曲線の作成手順を示します。動画ではマレイン酸の滴定で作ったエクセルシート(2021-12-12)を利用し、これを修正してグリシン塩酸塩の滴定曲線を作成しました。
動画
次回はアミノ酸(グルタミン酸)の滴定曲線の作り方です。


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