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今回はMgを含めアルカリ土類金属のイオン交換樹脂による相互分離について考えます。溶離液として、塩酸、酢酸アンモニウムを取りあげます   

<<アルカリ土類金属イオンのDg, Dv>>
陽イオン交換樹脂AG 50W-X8HCl系および-酢酸アンモニウム系におけるアルカリ土類金属イオンの質量分配係数(Dg)の文献値および容量分配係数(Dv)の推定値を下表に示します。   

2022-07-31-fig0-a

塩酸あるいは酢酸アンモニウム溶液中におけるMg, Ca, Sr, Baの陽イオン交換樹脂に対する分配係数は、MgCaSrBaの順に増加していて、溶離曲線はこの順で溶出してきます。   

<<溶離曲線>>
<溶離剤としてHClを用いたとき>
陽イオン交換樹脂カラム(AG 50W-X8)を用い、1.0 M HClを溶離液として用いるMg, Ca, Sr, Baの分離を検討します。分離の条件を「カラム長(L=15 cm)、カラム断面積(a=1 cm2)、間隙率(i=0.38)、樹脂の粒子直径(φ=0.01 cm(150 mesh))、線流速(um=1 cm/min)、溶離液(1 mol/L HCl)、各イオンの分配係数(Dv,Mg=8.4, Dv,Ca=16.9, Dv,Sr=24.1, Dv,Ba=50.8)、各イオンの添加量(各々0.01 mmol)として、溶出体積と濃度の関係をエクセルで計算しました(2022-07-24参照)。得られたエクセルシート(一部)-に示し、溶離曲線を-に示します。   

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2022-07-31-fig1
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2022-07-31-fig2

<溶離剤として酢酸アンモニウムを用いたとき>
陽イオン交換樹脂カラム(AG 50W-X8)を用い、0.5 M 酢酸アンモニウム(pH7)を溶離液として用いるMg, Ca, Sr, Baの分離を検討しました。分離の条件を「カラム長(L=15 cm)、カラム断面積(a=1 cm2)、間隙率(i=0.38)、樹脂の粒子直径(φ=0.01 cm(150 mesh))、線流速(um=1 cm/min)、溶離液(0.5 mol/L 酢酸アンモニウム)、各イオンの分配係数(Dv,Mg=3.1, Dv,Ca=7.4, Dv,Sr=14.0, Dv,Ba=30.4)、各イオンの添加量(各々0.01 mmol)として、溶離液体積と溶離液濃度の関係をエクセルで計算しました(2022-07-24参照)。得られた溶離曲線を-に示します。   

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2022-07-31-fig3

--を比較してみると、たとえば、CaSrの分離では溶離液として塩酸を用いるよりも酢酸アンモニウムの方が優れていることが分かります。カラムの長さを変えて分離度(Rs)(2022-07-10)を比較すると、下表のようになります。カラム長10 cmで酢酸アンモニウムを用いたときと同じ分離度を塩酸で達成するためにはおよそ30 cmのカラムが必要となり、そのぶん溶離液量と溶離時間が増加します。   

2022-07-31-fig0-b

<<溶離液の切り替え>>
-を見ると分かるように、同じ酢酸アンモニウム濃度で溶離するとSrBaの間が空きすぎており、溶離液量・溶離時間を減らす工夫が必要です。このためには、Srが溶出した後、Baの溶出を早めるよう溶離液の種類、濃度を変更することが有効です。   

溶離の途中で溶離液の種類、濃度を切り替えることで、溶出位置がどのように変化するかを調べます。溶出位置を最大濃度における溶出液体積V*で表し、溶離液を変更したときのV*の式を導きます。   

もし、溶離液が1種類である場合は次式、
V*=Vi
VrDv   …①
 Vi:カラム中樹脂の全間隙体積(mL)
 Vr:カラム中のイオン交換樹脂の体積(mL)
 Dv容量分配係数
に従います(2022-07-10の②’式)。   

ここで、前の成分が溶出した後、これまで使っていた溶離液(溶離液1)から次の成分の溶離を早める新たな溶離液(溶離液2)に変更するような溶離を考えます。この成分について溶離液1、溶離液2に対応するDvの値をD1, D2とします。
溶離液を変更する前にすでにそのピークが溶出した成分(たとえば3Mg, Cs, Sr)のV*は①式に従います。
V*=Vi
VrD1
一方そのピークがまだ溶出していない成分(たとえば上記のBa)について、
溶離液2に 変更したときのV*を求める式を導きます。最初に用いた溶離液1の体積をV1とし、溶離液1を用いてこの成分のピークが移動したカラム高さの分率をh1とすると、h1は用いた溶離液1の体積(V1)を、もしこの溶離液がずっと最後まで使われたとしてピークが出現する溶出液の体積(V*fin-Vi)で割った値に等しくなります。

h1 = V1/(V*finVi) = V1/(VrD1)
ここでV*fin:もし最初の溶離液1がずっと最後まで使われたとしたときのV*の値   

2番目に使用する溶離液2のもとで移動したカラム高さの分率h2は、
h2 = 1
V1/(VrD1)   …②
となります。
もし仮に、溶離液2が最初から最後まで使われたとしたら、V*の値は、
V*2 =Vi
VrD2
となりますが、しかし2番目の溶離液の最初の部分がカラムに入るとき、間隙体積は最初の溶離液で占められています。したがって、2番目の溶離液のVrD2 mLのみがピークの移動に有効となります。このためピークの溶出に必要な溶離液2の体積は、
V*2 = h2VrD2
です。
この式に②式を代入すると、
V*2 = (1
V1/(VrD1))D2Vr = D2(VrV1/D1)
したがって、ピークの溶出に必要な溶離液の全体積は
V* = Vi
V1V*2 = ViV1D2(VrV1/D1)   …③
となります。   

<例題>
-の例において、0.5 M 酢酸アンモニウム(pH7)を溶離液として用いてMg, Ca, Srを溶離したあと、ViV1=280 mLにおいて溶離液を1 M 酢酸アンモニウム(pH7)に切り替えたときのV*Baを求めます。
0.5M 酢酸アンモニウム(pH7)を用いたときのDvD1=30.4
1 M 酢酸アンモニウム(pH7)を用いたときのDvD2=9.1
とします。   

③式より、
V*Ba = ViV1D2(VrV1/D1) = 2809.1×(15(28015×0.38)/30.4) = 334 (mL)
つまりV=334 mLにおいて、Baの溶出ピークが出現します。   

もし-のように、0.5M 酢酸アンモニウム(pH7)を用い続ければ、
V*Ba = 15×0.3815×30.4462 (mL)
なので、462334 = 128 (mL)、つまり流速を1 ml/minとすると溶出ピークの出現は2時間ほど早くなることになります。   

またもし、第2の溶離液として、4 M HCl (Dv=4.8)を用いれば、Baの溶出ピークの位置は、
V*Ba = 280
4.8×(15(28015×0.38)/30.4) = 309 (mL)
となります。