前回(2023-01-15)の続きです。第2属Aのイオンを含む溶液にH2SO4を加えてPbSO4を沈殿分離した後の沪液中にはBi3+, Cu2+, Cd2+が含まれます。今回はこれらイオンの分離、確認操作について検討を行います。
<<Bi3+の分離と確認>>
<アンモニアによる沈殿分離・溶解>
第2属Aイオンを含む溶液からPbSO4を沈殿分離した沪液(Bi3+, Cu2+, Cd2+)にNH3水を加えるとBi3+はBi(OH)3となって沈殿します。一方、Cu2+,
Cd2+はアンミン錯体作って溶液に留まります。これを沪過することにより、Bi3+をCu2+, Cd2+から分離することができます。
CuSO4, CdSO4, Bi2(SO4)3(金属イオン:各々0.03 mol/L)を含む0.15 mol/Lの硫酸溶液1 mLに15 mol/Lのアンモニアを加えたときの各イオンの沈殿率の様子を図-1に示します。計算ではCu(OH)2, Cd(OH)2, Bi(OH)3のが沈殿することにして、これらの溶解度積(Ksp)を用いました。溶解度積および酸解離定数、錯生成定数については図-1中に記載しています。硫酸が中和された後pHが上昇するとBi(OH)3が沈殿することが分かります。Cu2+については、後pHの上昇とともにCu(OH)2の沈殿が一旦生成しますが、NH3を過剰に加えると、アンミン錯体を作って再溶解します。Cd2+については、沈殿が生成しないという結果となりました。
<Bi3+の確認>
Bi(OH)3の沈殿に0.5 mol/LのSnCl2 3滴と6 mol/LのNaOH 3滴を加え、かき混ぜて黒色沈殿になればBi3+の存在を確認できます。
2Bi(OH)3 + 3Sn2+ + 12OH- → 2Bi (黒色沈殿) + 3Sn(OH)62-
また、Bi(OH)3の沈殿にアンチピリン-KI試薬+HClを加えると橙色に呈色します。
<<Cu2+,
Cd2+の確認>>
Bi(OH)3を沪過した沪液を二分して、Cu2+, Cd2+の確認を行います。
<Cu2+の確認>
もし確認用溶液が青色ならばCu2+の存在を示唆します。確認用溶液にフェノールフタレインを加え、溶液が無色になるまで酢酸(HAc)を加えます。
Cu(NH3)42+ + 4HAc → CuAc2 + 2Ac-+ 4NH4+
例えば、0.15 mol/LのH2SO4および1.0 mol/L NH3を含むCu2+,
Cd2+(各々0.03 mol/L)の溶液に酢酸を添加したとき、酢酸濃度(Ca)と各化学種濃度(Cu(NH3)42+,
CuAc2, Cd(NH3)42+, CdAc2)の関係を図-2に示します。酢酸濃度がおよそ0.6 mol/Lを超えるとCu(NH3)42+(青色)はCuAc2(無色)に変わります。
この溶液に0.025 mo/Lのヘキサシアニド鉄(II)酸カリウム(K4Fe(CN)6)を1, 2滴加え、赤褐色沈殿が生成するとCu2+が存在することを示します(Cd2+は白色沈殿)。
2Cu2+ + Fe(CN)64- →
Cu2[Fe(CN)6] (赤褐色沈殿)
2Cd2+ + Fe(CN)64- → Cd2[Fe(CN)6] (白色沈殿)
<Cd2+の確認>
Cu2+共存下でCd2+を確認する場合は、Cu(NH3)42+の青色がなくなるまで1 mol/L KCNを加えます(*1)。ここに硫化水素を通じます。黄色沈殿の生成はCd2+の存在を示します(2019-06-16)。
Cd(NH3)42+ + 4CN-
→ Cd(CN)42- + 4NH3
Cd(CN)42- + S2- →
CdS (黄色沈殿) + 4CN-
例えば、0.03 mol/LのCd2+,
0.15 mol/LのH2SO4および1.0 mol/L NH3を含む溶液にKCNを添加したときのKCN濃度(Ccn)と各化学種濃度(Cd(NH3)32+, Cd(NH3)42+,
Cd(CN)3-, Cd(CN)42-)の関係を図-3に示します。KCN濃度が0.12 mol/Lを超えると、Cd2+のアンミン錯体はシアノ錯体に変わり、さらに過剰に加えるとCd(CN)42-が優勢な化学種になることが分かります。
0.03 mol/LのCd2+, 0.15 mol/LのH2SO4, 1.0 mol/L NH3および0.5 mol/LのKCNを含む溶液にH2Sを吹き込んだときのCdSの沈殿率を図-4に示します。
この式は大きく右に偏っている。1molのCu(NH3)42+を還元してCN錯体を作ってCu(CN)43-にするのに4.5 molのCN-が必要。したがって、例えば0.03 mol/LのCu2+に十分なNH3が加えられて青色のCu(NH3)42+が生成しているとき、この溶液の青色を消すためにはおよそ0.14 mol/L以上のKCNを加えればよいことが分かる。このCu(CN)43-錯体は非常に安定なので、H2Sを通じても銅の硫化物沈殿を生成しない。KCNの代わりにNa2S2O4(ハイドロサルファイト)を用いる方法もある。





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