第2属の硫化物沈殿に多硫化ナトリウム(Na2Sn)を加えると、チオ錯イオン(HgS22-, AsS42-, SbS43-, SnS32-)を作って溶解するイオンは<第2属B>に分類されます(2023-01-15)。今回は第2属Bの分離・確認操作です。
<<第2属Bの分離・確認操作>>
第2属Bの分離操作のフローチャートを図-1に示し、確認操作の概要を図-2に示します。
図-1
<<Hg,
AsとSb, Snの分離>>
<塩酸による分離>
チオ錯イオン(HgS22-, AsS42-,
SbS43-, SnS32-)を含む溶液にチモールフタレイン(変色pH域:9.3(無色)~10.5(青色))を加え、青色→無色になるまで塩酸を加えて加温すると、再び硫化物沈殿が生成します。同時に多硫化物イオンも酸化されて単体イオンになり溶液は白濁します。
HgS22- + 2H+ → HgS(黒色) + H2S
2AsS42- + 6H+ →
As2S5(黄色) +
3H2S
2SbS43- + 6H+ →
Sb2S5(橙色) +
3H2S
SnS32- + 2H+ → SnS2(黄色) + H2S
S22- + 2H+ → S (白色)+ H2S
これらの沈殿を沪過洗浄後、沈殿に6 mol/Lの塩酸を加えて加熱すると、HgSとAs2S5は塩酸には溶解せず沈殿のままですが、Sb2S5はSb2S3に還元され塩化物錯体(SbCl4-)を作って溶解します。SnS2も塩化物錯体(SnCl62-)を作って溶解します。
Sb2S3 + 6H+ + 8Cl- → 2SbCl4-
+ 3H2S
SnS2 + 4H+ + 6Cl- → SnCl62-
+ 2H2S
<<SbとSnの確認>>
<確認用溶液の調製>
SbCl4-およびSnCl62-を含む溶液を乾固近くまで蒸発し、HClと酒石酸を加えて酸性度を調整します。酒石酸の添加は、Sbの検出に妨害となるSnを酒石酸錯体にしてマスクするためです。この溶液を分割し、SbとSnの確認を行います。
<Sbの確認>
(1) 沪紙上にフォリン試薬(リンモリブデン酸アンモニウム)を1~2滴落とし、蒸気に当てながらその上に確認用溶液を1滴落とします。数分後青色が出ればSbの存在を確認できます。
Sb3+ + H3[PO4(MoO3)12]
+2H+ → Sb5+ +
H3[PO4(MoO3)9(Mo3O8)]
(青色) +3H2O
(2) 確認用溶液に1 mol/L NaHCO3を滴下し沈殿をわずかに生成させた後、6 mol/L HCl, 1滴を加えSbが加水分解しないようpH調整し、固体のチオ硫酸ナトリウム1片を加えます。橙色の沈殿はSbの存在を示します。この沈殿はSb2S3に多少のSb2O3とSが混ったものと考えられています。
2Sb3+ + 3S2O32-
+ 3H2O → Sb2S3
(橙色) + 3SO42- + 6H+
<Snの確認>
確認用溶液に6 mol/L HClと少量の金属Mgを加え加温してMgを溶かします。ここで黒色沈殿(*1)が生じれば沪過し、沪液に0.2 mol/L HgCl2溶液1滴を加えます。灰白~黒色沈殿はSnの存在を示します。
SnCl62- + Mg → SnCl42-
+ Mg2+ + 2Cl-
SnCl42- + 2HgCl2 →
Hg2Cl2 (白色) + SnCl62-
SnCl42- +Hg2Cl2
→ 2Hg (黒色) + SnCl62-
(*1) この黒色沈殿はSbCl4-が還元して生じた金属Sbであり、除去する必要がある。
2SbCl4- + 3Mg → 2Sb + 3Mg2+ + 8Cl-
<<HgとAsの分離と確認>>
<H2O2による分離>
HgSとAs2S5の沈殿にNH3とH2O2を加え加温するとAs2S5だけが溶解します。NH3存在下、As2S5のAs5+はヒ酸イオン(AsO43-)になり、S2-はH2O2により酸化されて硫酸イオンになります。
As2S5 + 20H2O2
+ 16NH3 → 2(NH4)3AsO4
+ 5(NH4)2SO4 + 12H2O
<Asの確認>
(1) 上記のAsO43-を含む溶液に15 mol/L アンモニア水5滴とマグネシア混液(Mg(NO3)2+NH4NO3+NH3) 3滴を加えて白色沈殿が生じれば、As5+の存在を示します。なお、この沈殿は酸に溶解します。
AsO43- + Mg2+ +
NH4+ + 6H2O
→ MgNH4AsO4・6H2O (白色)
(2) さらにこの沈殿を沪過後、6 mol/L 硝酸5滴と0.5 mol/L
モリブデン酸アンモニウム((NH4)2MoO4),
7滴を加えて加熱すると、ヒモリブデン酸アンモニウムの黄色沈殿を生じます。
AsO43- + 12MoO42-
+ 3NH4+ + 24H+
→ (NH4)2AsO4・12MoO3 (黄色)+ 12H2O
この沈殿は塩基性にすると溶解します。
<HgSの溶解>
上記<H2O2による分離>において分離した沈殿に、(5% Na2ClO+6 M HCl+水1 mL)を加え煮沸すると沈殿はHgCl42-となり溶解します。
HgS + 3Cl- + HClO +
H+ → HgCl42-
+ S + 2H2O
<Hgの確認>
(1) このHgCl42-溶液に0.5 mol/L SnCl2, 1滴を加えると、HgCl42-は金属まで還元します。
2HgCl42- + Sn2+ → Hg2Cl2
(白色) + SnCl62-
Hg2Cl2 + Sn2+ + 4Cl- → 2Hg (黒色) +
SnCl62-
(2) HgCl42-溶液に(15 mol/L NH3, 1滴+1 mol/L NH4I, 1滴+6 mol/L NaOH, 3~7滴)を加えると褐色沈殿が生成します(ネスラー反応)。
2HgCl42- + NH4+
+ I- + 4OH- →
I-Hg-O-Hg-NH3 (褐色) + 3H2O + 8Cl-


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