今回は、前回(2023-02-05)の続きで分属におけるNH4Clの効果について調べます。また属内分離について説明します。分属後の分離確認操作では、第3属の沈殿にNaOHとH2O2を加えて煮沸し、Al(OH)3はアルミン酸イオンとして, Cr(OH)3は酸化してクロム酸イオンとして溶解し確認します。沪過洗浄後、残った沈殿は硝酸と塩化ヒドロキシルアンモニウムを加えて煮沸し、Fe(OH)3はFe3+として, Mn(OH)nはMn2+として溶解し確認します。
<<第3属の分属操作>>(前回の続き)
<NH4Clの効果>
図-1(前回(2023-02-05)図-6の再録)で分かるようにNH3を加えてAl3+, Fe3+, Cr3+の水酸化物を作るためにはpHを適切な範囲に保つ必要があります。他のイオンが沈殿せずにAl3+, Fe3+, Cr3+の水酸化物が沈殿する適切なpH域は8.0~9.5程度と考えられます。添加するNH3量が多少前後しても適切なpHが保たれるよう、NH4Cl-NH3緩衝系をうまく利用する必要があります。またNi2+, Zn2+, Co3+のようにアンミン錯体の形成により溶液に残したいイオンについてはpHとアンモニア濃度の調節が重要となります。
アルミニウムおよびニッケルを例に取って、Al(OH)3, Ni(OH)2の溶解度に対するNH4Cl添加の効果を調べます。
NH4Cl濃度(Cs)がそれぞれ0.1, 0.2, 0.3, 0.5 mol/Lの溶液にアンモニア水を加えて全アンモニア濃度(Cb)が0.01~1 mol/Lとなるようにした溶液に対するAl(OH)3, Ni(OH)2の溶解度を求めました。塩素イオン濃度は、[Cl]=Cs+2Sとしました。ただし、アンモニア水の添加による体積変化は無視します。平衡定数は前回(2023-02-05)の値を用い、塩化物錯体の生成や活量係数は考慮しません。
NH4ClおよびNH3を含む溶液に対するAl(OH)3の溶解度(log S)とpHの関係を図-2に示します。Al(OH)3の溶解度はNH4Cl濃度に関係なくpHのみの関数であることが分かります。Fe3+, Cr3+の溶解度も同様です。
また、NH3の添加濃度(Cb)とpHの関係を図-3に示します。一定のNH4Clを加えることによってpH8.0~9.5付近のCbの許容幅が大きくなっていることが分かります。
一方、Ni(OH)2の溶解度(log S)とpHの関係を図-4に示します。Ni(OH)2の溶解度はNH4Cl濃度およびpHの関数であることが分かります。pH8.0~9.5において0.01mpl/LのNi2+を水酸化物として沈殿させないためには(log S>-2.0)、0.2
mol/L以上のNH4Cl濃度が必要と考えられます。Zn2+, Co3+も同様です。
<<第3属の属内分離と確認>>
<NaOH+H2O2による分離>
第3属の沈殿(Al(OH)3, Cr(OH)3,
Fe(OH)3, Mn(OH)n)にNaOHとH2O2を加えて煮沸すると、Al(OH)3はテトラヒドロキシドアルミン酸イオン(Al(OH)4-)になり溶解します。
Al(OH)3 + OH- → Al(OH)4-
また、Cr(OH)3は、酸化してクロム酸イオン(CrO42-)になり溶解します。
Cr(OH)3 + OH- → Cr(OH)4-
2Cr(OH)4- + 3H2O2
+ 2OH- → 2CrO42-
+ 8H2O
過剰のH2O2は確認反応を妨害するので、十分な煮沸を行い余剰のH2O2を分解します。
Fe(OH)3, Mn(OH)nは沈殿として残るので、これを沪過洗浄します。
AlO2- とCrO42-を含む沪液は、加熱濃縮して、フェノールフタレインを加え無色になるまで酢酸を加えさらに過剰に酢酸を加えます。この溶液を分割してAl, Cr用確認用溶液とします。
<Alの確認>
確認用溶液(pH≒4.5)の一部にアルミノン試薬1滴を加え、湯浴中で1~2分加熱して1
M (NH4)2CO3 2滴を加えます。赤色の沈殿または溶液は、Alの存在を示します。(NH4)2CO3の添加はアルカリ土類金属の妨害を防ぐためです。
<Crの確認>
確認用溶液(pH≒4.5)の一部に0.05 M 酢酸鉛(PbAc2) 1滴を加えます。黄色沈殿は、Crの存在を示します。
CrO42- + PbAc2 →
PbCrO4 (黄色)+ 2Ac-
このときH2O2は完全に除去しておく必要があります。
<沈殿の処理>
Fe(OH)3, Mn(OH)nの沈殿は硝酸と塩化ヒドロキシルアンモニウム(HONH3Cl)を加えて分解します。この溶液をFe, Mn用確認用溶液とします。
4Fe(OH)3 + 2OHNH3+ + 6H+ → 4Fe2+ + N2O + 13H2O
3Fe2+ + NO3- + 4H+ → 3Fe3+ + NO + 2H2O
6Mn(OH)3 + OHNH3+ + 10H+ →
6Mn2+ + NO3- + 16H2O
<Feの確認>
(1) 確認用溶液に0.1 M NH4SCN 1滴を加えます。赤色の沈殿は、Feの存在を示します。
Fe3+ + 3SCN- → 4Fe(SCN)3 (赤色)
(2) 確認用溶液に0.025 M K4Fe(CN)6
1滴を加えます。青色の沈殿は、Feの存在を示します。
4Fe3+ + 3[Fe(CN)6]4- → Fe4[Fe(CN)6]3 (青色)






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