前回(2023-07-09)は、二分法を用いて弱酸の滴定曲線を描く方法について説明しました。今回は、MIN法を用いる方法について説明します。
<<MIN法について>>(2023-05-07)
これまでも述べてきたように平衡定数式、物質バランス式、電荷バランス式から、NaOHによる弱酸の滴定に対して次のような関係式が導かれます。
Q = [H]-Kw/[H]+Cb-CaKa/([H]+Ka) = 0 …①
前回(2023-07-09)述べたようにQは単調関数であり、pHをたとえば-1から15を0.01刻みで与え、[H]=10^-pHを①式に代入して一連のQ値を求め、その絶対値(|Q|)の最小値を求めると、この値がQ=0の近似解となります(*1)。pHとQ,
|Q|の関係の例を図-1に示します。
(*1) 数mol/L程度以下の酸を数mol/L程度以下のNaOHで滴定するとき、pH=-1~15までのQ値を調べれば十分である。pHの刻み幅は近似解の精度に影響を与える。近似の精度をさらに上げたい場合は、得られた近似解の周辺でpHの刻みをさらに小さくして同様の操作を行なえばよい。
-1から15まで0.01刻みでpHを与えた場合1601回の計算をしなければなりませんが、エクセルを用いればこれらの計算データは簡単に入手できます。またエクセル関数を用いると、これらのデータの中から|Q|の最小値を与えるpHを自動的に見つけることができます。つまり、これらのデータからMIN関数を用いて最小値(|Q|≒0)を探し、MATCH関数でこの最小値が最初から何番目にあるかを調べ、INDEX関数でその行のpHの値を求めると、これが答えとなります。このような方法をここでは「MIN法」と呼ぶことにします。
詳細は、次の文献を参照願います。
・宗林由樹, 向井浩:「新・物質科学ライブラリー7 基礎分析化学[新訂版]」サイエンス社 (2018) 76ページ
<<MIN法による滴定曲線の描き方>>
MIN法を用いて、Cao=0.1
mol/Lの酢酸(HA)溶液, 体積V=20 mL(pKa=4.76)をCbo=0.1
mol/LのNaOH溶液で滴定する(滴下量:T mL)ときの理論的滴定曲線を描きます。
<MIN法の操作手順>(図-2を参照)
○
条件表の作成
1) 条件表にpKa, pKw, Cao,
V, Cboの既定値を入れる。Ka, Kwを計算する。Tに0を入れる。Ca,
Cbを計算する。
・Ka=10^(-pKa) D6 =10^-D4
・Kw=10^(-pKw) D7 =10^-D5
・T=0 D11 =0
・Ca=CaoV/(V+T) D12 =D8*D9/(D9+D11)
・Cb=CboT/(V+T) D13
=D10*D11/(D9+D11)
○ |Q|の最小値を与えるpHの算出
2) pHの値を-1~15まで0.01きざみで連続して入れる。(B25:B1625)
3) 濃度に関する計算式をいれる。(C25~I25)
・[H]=10^(-pH) C25 =10^-B25
・[OH]=Kw/[H] D25 =$D$7/C25
・[Na]=Cb E25 =$D$13
・[A]=Ca/(1+[H]/Ka) F25 =$D$12/(1+C25/$D$6)
・[HA]=[H]*[A]/Ka G25 =C25*F25/$D$6
・Q=[H]-[OH]+[Na]-[A] H25 =C25-D25+E25-F25
・|Q|=ABS(Q) I25 =ABS(H25)
4) 濃度の計算式を連続してコピーする。
・C25:I25を選択し、C1625:I1625までコピーする。
5) T=0のときの|Q|の最小値を与えるpHを求める(*2)。
・D17 =INDEX(B25:B1625,MATCH(MIN(I25:I1625),I25:I1625,0))
(*2) 統計関数であるMIN関数でabs(Q)の最小値を求め、検索/行列関数のMATCH関数でその最小値の相対的位置(上から何番目)を求め、INDEX関数でその位置のpHの値を求める。
○ Tを変化させたときのテータテーブルの作成
6) Tの値を入れる。
・Tの値を0~40まで0.1きざみで連続してL列に入れる。(L4:L404)
7) T=0のときのpHをコピーする。
・M4 =D17
8) データテーブルの作成範囲を指定する。(L4:M404)
9) データテーブルを作成する。
・メニューバー:「データ」
・ツールバー:「What-If分析」⇒「データテーブル」⇒「データテーブル」ダイアログ⇒「列の代入セル」に”D11”を指定⇒「OK」
○ 滴定曲線の作成
10) 見出しを含め散布図作成の範囲を指定する。(L3:M404)
11) 散布図を作成する。
・メニューバー:「挿入」
・ツールバー:「グラフ」⇒「散布図」⇒「散布図(平滑線)」⇒「OK」
(散布図は目的に応じて適当にカスタマイズしてください)
MIN法の計算結果を図-2に示し、作成した滴定曲線を図-3に示します。



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