これまでモノプロトン酸・塩基の滴定曲線の描き方について説明してきました。今回はこのようにして作成した滴定曲線について、その特徴と濃度、酸解離定数の影響について調べます。
<<滴定曲線の特徴>>
典型的な例として、0.1 mol/Lの硝酸(HNO3) 20 mLあるいは0.1 mol/Lの酢酸(HAc) 20 mLを0.1 mol/L NaOHで滴定した場合の滴定曲線を図-1(a)に示します。また、0.1 mol/Lの水酸化カリウム(KOH) 20 mLあるいは0.1 mol/Lのアンモニア(NH3) 20 mLを0.1 mol/L HClで滴定した場合の滴定曲線を図-1(b)に示します。
図から明らかなように、これらの滴定曲線は、滴定の途中当量点付近に達するまではpHはゆっくり変化し、当量点前後でpHが急激に変化し(pHジャンプ)、当量点を過ぎるとまたpHがゆっくり変化する曲線となります。この当量点前後の急激なpHジャンプにより当量点の検出は容易となり、精度のよい定量分析が可能となります。
また、当量点のpHは、強塩基による強酸の滴定あるいは強酸による強塩基の滴定ではpH=7.00となりますが、強塩基による弱酸の滴定では塩基性に傾き、強酸による弱塩基の滴定では酸性に傾きます。
このような滴定曲線に及ぼす濃度あるいは酸解離定数の影響について調べます。
<<濃度の影響>>
当量点におけるpHジャンプの程度は、被滴定溶液および滴定液中の成分濃度(Cao, Cbo mol/L)によって大きく影響を受けます。図-2は強塩基による強酸の滴定における濃度の効果について示したものです。図では、Cao mol/Lの強酸(HNO3)溶液
20 mLをCbo mol/LのNaOH溶液で滴定する(Cao=Cbo
mol/L)場合について、Caoを1 mol/L~1×10^-4 mol/Lと変化させたときの滴定曲線の様子を示しています*1)。
*1) 計算データを図-3に示す。強酸-強塩基滴定では2次方程式を解いてpHを求めることができる(2023-06-25)。このときTとCaoの2変数を同時に変化させてpHを求めたいので、複入力データテーブルを用いて計算をした。
図-2から明らかなように、試料の酸濃度と滴定液のNaOH濃度が低くなるにつれて、pHジャンプの程度は小さくなることが分かります。
図-4は強塩基による弱酸(酢酸)の滴定における濃度の効果について示したものです。図では、Cao mol/Lの酢酸溶液 20 mLをCbo mol/LのNaOH溶液で滴定する(Cao=Cbo mol/L)場合について、Caoを1 mol/L~1×10^-4 mol/Lと変化させたときの滴定曲線の様子を示しています。
酢酸の滴定曲線においても、試料の酸濃度と滴定液のNaOH濃度が低くなるにつれて、pHジャンプの程度は小さくなっていますが、強酸の滴定曲線に比べると酸濃度の影響はあまり大きくない(当量点以前の酸濃度変化が小さい)ことが分かります。
以上は、試料の酸濃度と滴定液のNaOH濃度を同一にしたときの比較ですが、同じ酸濃度の試料を異なったNaOH濃度で滴定した場合の比較を図-5に示します。
滴定液のNaOH濃度を高くすれば、pHジャンプは大きくなり滴定の精度に有利に働きそうですが、滴定液の滴下量は減少するため、滴下量の相対的誤差は大きくなります。
<<酸解離定数の影響>>
弱酸について、その酸解離定数Kaと滴定曲線の関係を調べます。図-6は、濃度0.1
mol/Lの弱酸(pKa=0~10),
20 mLを0.1 mol/LのNaOHで滴定したときの滴定曲線を示します。また、図-7は、濃度0.001
mol/Lの弱酸(pKa=0~10),
20 mLを0.001 mol/LのNaOHで滴定したときの滴定曲線を示します。
これら図から分かるように、滴定曲線のpHジャンプの形状は、弱酸とNaOHの濃度によって若干異なりますが、いずれの場合もKaの値が小さい(=pKaの値が大きい)ほどpHジャンプの程度は小さくなることが分かります。また、Kaの値が非常に小さくない限り、当量点を超えるとpHはKaの値に影響されないことが分かります(2023-07-02)。
以上酸の滴定について調べましたが、塩基の滴定の場合も同様のことが言えます。このように、滴定曲線の形状は酸塩基の濃度と酸解離定数が大きく影響しますが、滴定の精度はpHジャンプの大きさだけでは決まりません。滴定の精度については指示薬の問題も含め今後いずれもう少し定量的に検討したいと思います。







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