これまで、ポリプロトン酸塩基やそれらの塩に関するpHについて計算してきました。今回は、これらの酸塩基をさまざまな割合で混合した水溶液について、ソルバー法、二分法を用いてpHを求めます。代表例としてリン酸とアンモニアの混合物を取り上げます。また理解の手助けとなるよう対数濃度図を示します。   

<<リン酸+アンモニア混合物のpH>>
リン酸の全濃度をCa, アンモニアの全濃度をCnとすると、関係式および溶液中の各化学種の濃度は次のとおりです。
<
リン酸の酸解離定数>
K1 = [H][H2PO4]/[H3PO4]
K2 = [H][HPO4]/[H2PO4]
K3 = [H][PO4]/[HPO4]
<アンモニウムイオンの酸解離定数>
Kn = [H][NH3]/[NH4]
<
水のイオン積>
Kw = [H][OH]
<リン酸およびアンモニアの物質バランス式>
Ca = [PO4]
[HPO4][H2PO4][H3PO4]
Cn = [NH3]
[NH4]
<
電荷バランス式>
Q = [H]
[OH]3[PO4]2[HPO4][H2PO4][NH4] = 0
<
化学種濃度>
[H] = 10^-pH
[OH] = Kw/[H]
[PO4] = Ca/(1
[H]/K3[H]^2/(K3K2)[H]^3/(K3K2K1))
[HPO4] = [H][PO4]/K3
[H2PO4] = [H][HPO4]/K2
[H3PO4] = [H][H2PO4]/K1
[NH3] = Cn/(1+[H]/Kn)
[NH4] = [H][NH3]/Kn
   

<ソルバー法>(2023-04-23)
様々なCa, Cnに対して、目的セルをQ(0), 変数セルをpHとして、エクセルのソルバー法を実施すれば混合溶液のpHを求めることができます。   

例題10.1 mol/Lリン酸および(1) 0.05 mol/L, (2) 0.1 mol/L, (3) 0.15 mol/L, (4) 0.2 mol/L, (5) 0.25 mol/L, (6) 0.3 mol/Lのアンモニアを含む溶液のpHを求めよ。リン酸の酸解離定数をpK1=2.15, pK2=7.20, pK3=12.38、アンモニウムイオンの酸解離定数をpKn=9.25、水のイオン積をKw=14.00とする。
ソルバー法の結果を-に示す。   

-

 2023-11-19-fig1

<二分法>(2023-04-30)
あるCa, Cnに対して、二分法表を作成し、Ca, Cnを変化させてデータデ-ブルを作成すると、様々な混合溶液のpHを一回の操作で同時に求めることができます。   

例題2:(1) 0.1 mol/L, (2) 0.2 mol/L, (3) 0.3 mol/Lのリン酸および0.00.9 mol/L(0.05 mol/L刻み)のアンモニアを含む溶液のpHを求めよ。平衡定数は、例題1と同じ。
二分法を用いて求めたpHの抜粋を-に示す。またCa, Cnを変化させたときのpHの変化のグラフを-に示す。   

-

 2023-11-19-fig2

-

 2023-11-19-fig3

<<対数濃度図>>(2023-05-14)
リン酸とアンモニアの対数濃度図を作成し、図上で電荷バランスやプロトン条件を満足させる点を探すことにより、混合溶液のpHを求めることができます。
例題3:0.1 mol/Lリン酸および(1) 0.05 mol/L, (2) 0.1 mol/L, (3) 0.2 mol/Lのアンモニアを含む溶液のpHを求めよ。平衡定数は、例題1と同じ。
(1) Ca=0.1 mol/L, Cn=0.05 mol/L
のときの対数濃度図を-に示す。求めるpHlog([H]+[H3PO4])logCnの交点となる(pH2.2)(*1)
(*1) 電荷バランス式[H]+[NH4]=[H2PO4]+2[HPO4]+3[PO4]+[OH]
物質バランスCa=[PO4]+[HPO4]+[H2PO4]+[H3PO4],  Cn=[NH3]+[NH4]
C
a=2Cnなので、
[H]+(C
n[NH3])=(2Cn[H3PO4][HPO4][PO4])+2[HPO4]+3[PO4]+[OH]
[H]+[H
3PO4]=Cn+[HPO4]+2[PO4]+[OH]+[NH3]
-から明らかなように、Cn>>([HPO4]+2[PO4]+[OH]+[NH3])なので、
[H]+[H3PO4]Cn (概略では[H3PO4]Cn)   

-
2023-11-19-fig4

(2) Ca=0.1 mol/L, Cn=0.1 mol/Lのときの対数濃度図を-に示す。求めるpHlog([H]+[H3PO4])log[HPO4]の交点となる(pH4.7)(*2)
(*2) 電荷バランス[H]+[NH4]=[H2PO4]+2[HPO4]+3[PO4]+[OH]
物質バランスCa=[PO4]+[HPO4]+[H2PO4]+[H3PO4],  Cn=[NH3]+[NH4]
C
a=Cnなので、
[H]+(C
n[NH3])=(Cn[H3PO4][HPO4][PO4])+2[HPO4]+3[PO4]+[OH]
[H]+[H
3PO4]=[HPO4]+2[PO4]+[OH]+[NH3]
-から明らかなように、[HPO4]>>(2[PO4]+[OH]+[NH3])なので、
[H]+[H3PO4][HPO4] (概略では[H3PO4][HPO4])   

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2023-11-19-fig5

(3) Ca=0.1 mol/L, Cn=0.2 mol/Lのときの対数濃度図を-に示す。求めるpHlog[H2PO4]log[NH3]の交点となる(pH8.1)(*3)
(*3) 電荷バランス[H]+[NH4]=[H2PO4]+2[HPO4]+3[PO4]+[OH]
物質バランスCa=[PO4]+[HPO4]+[H2PO4]+[H3PO4],  Cn=[NH3]+[NH4]
2C
a=Cnなので、
[H]+(C
n[NH3])=[H2PO4]+2(Cn[PO4][H2PO4][H3PO4])+3[PO4]+[OH]
[H]+2[H
3PO4]+[H2PO4]=[PO4]+[OH]+[NH3]
-から明らかなように、[H2PO4]>>([H]+2[H3PO4]), [NH3]>>([PO4]+[OH])なので、
[H2PO4][NH3]   

-

 2023-11-19-fig6