前回(2023-12-17)に引き続き、アミノ酸の滴定曲線の作成方法について考えます。 今回はレビ法(2023-12-10)を用いて滴定曲線を描きます。   

<<モノアミノ-モノカルボン酸・塩酸塩(例:アラニン・塩酸塩)>>
モノアミノ-モノカルボン酸の一種であるアラニンは次のように解離します。   

2023-12-24-figa

Cao mol/Lモノアミノ-モノカルボン酸・塩酸塩(HAHCl), V mLCbo mol/LNaOH滴定することを考えます(滴下量:T mL)。酸解離定数をK1, K2, 水のイオン積をKwとします(活量補正なし)。関係式は次の通りです。
H2A+ ⇆ H+ + HA0
HA0 ⇆ H+ + A-
<平衡定数>
K1 = [H][HA0]/[H2A+]
K2 = [H][A-]/[HA0]
<物質バランスと化学種濃度>
Ca = [A-]
[HA0][H2A+]
α = 1+[H]/K2+[H]^2/(K2K1)
f0 = [A-]/Ca = 1/
α
f1 = [HA0]/Ca = [H]
f0/K2
f2 = [H2A+]/Ca = [H]f1/K1
[H] = 10^-pH
[OH] = Kw/[[H]
[Na] = Cb = CboT/(V+T)
[A-] = Caf0 = Caof0V/(V+T)
[HA0] = Caf1 = Caof1V/(V+T)
[H2A+] = Caf2 = Caof2V/(V+T)
[Cl] = Ca = CaoV/(V+T)
<電荷バランス>
[H
][Na]+[H2A+[OH]+[A-]+[Cl]   

以上の関係から、モノアミノ-モノカルボン酸・塩酸塩の滴定曲線の式は、Δ= [H]-[OH]として、
T = V(Cao(f0
f21)
Δ)/(CboΔ) …①
となります
(*1), (*2)
(*1) ①式の誘導:
Ca
= CaoV/(VT) = [A-][HA][H2A+] = [Cl]
Cb = CboT/(V
T) = [Na]
f2 = [H2A+]/Ca, f0 = [A-]/Ca
これらの関係を電荷バランス式に代入して、
[H]
[Na]
[H2A+] = [OH][A-][Cl]
[H]
Cb
Caf2 = [OH]Caf0Ca
[H]
CboT/(VT)Caof2V/(VT) = [OH]Caof0V/(VT)CaoV/(VT)
[H](V
T)CboT
= [OH](VT)CaoVf0CaoVf2CaoV
([H]
[OH])TCboT = ([OH][H])VCaoV(f0f21)
Δ= [H][OH]とすると、
T = V(Cao(f0f21)
Δ)/(CboΔ) …①   

(*2)ジプロトン酸の滴定曲線の式は、
T = V(Cao(2f0
f1)-Δ)/(Cbo+Δ) …②
で示される
(2023-12-10)
f0
f1f2=1なので、f0f2+1=2f0f1
つまり①式と②式は等しい。したがってモノアミノ-モノカルボン酸・塩酸塩の滴定曲線はジプロトン酸の滴定曲線の式を用いて描くこともできる。   

0.01 mol/Lのアラニン・塩酸塩10 mL0.01 mol/LNaOHで滴定したときのエクセルによる計算結果と滴定曲線を-に示します(pK1=2.34, pK2=9.87)。   

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2023-12-24-fig1

<<モノアミノ-ジカルボン酸・塩酸塩(例:グルタミン酸・塩酸塩)>>
モノアミノ-ジノカルボン酸の一種であるグルタミン酸は次のように解離します。   

2023-12-24-figb

Cao mol/Lモノアミノ-ジカルボン酸・塩酸塩(H2AHCl), V mLCbo mol/LNaOH滴定することを考えます(滴下量:T mL)。酸解離定数をK1, K2, K3, 水のイオン積をKwとします(活量補正なし)。関係式は次の通りです。
H3A+ ⇆ H+ + H2A0
H2A0 ⇆ H+ + HA-
HA- ⇆ H+ + A2-
<平衡定数>
K1 = [H][H2A0]/[H3A+]
K2 = [H][HA-]/[H2A0]
K3 = [H][A2-]/[HA-]
<物質バランスと化学種濃度>
Ca = [A2-]
[HA-][H2A0][H3A+]
α
 = 1+[H]/K3+[H]^2/(K3K2)+[H]^3/(K3K2K1)
f0 = [A2-]/ Ca = 1/
α
f1 = [HA-]/Ca = [H]f0/K3
f2 = [H2A0]/Ca = [H]f1/K2
f3 = [H3A+]/Ca = [H]f2/K1

[H] = 10^-pH
[OH] = Kw/[[H]
[Na] = Cb = CboT/(V+T)
[A2-] = Caf0 = Caof0V/(V+T)
[HA-] = Caf1 = Caof1V/(V+T)
[H2A0] = Caf2 = Caof2V/(V+T)
[H3A+] = Caf3 = Caof3V/(V+T)
[Cl] = Ca = CaoV(V+T)
<電荷バランス>
[H]
[Na][H3A+] = [OH]2[A2-][HA-][Cl]   

モノアミノ-ジカルボン酸・塩酸塩の場合、滴定曲線の式は、Δ= [H]-[OH]として、
T = V(Cao(2f0
f1f31)
Δ)/(CboΔ) (*3) …③
(*3) ③式は①式の誘導と同様、物質バランスと電荷バランスから誘導できる。
また、トリプロトン酸の滴定曲線の式は、
T = V(Cao(3f0+2f1f2)-Δ)/(CboΔ) …④
で示される(2023-12-10)
f0f1f2f3=1なので、2f0f1f31=3f02f1f2
つまり③式と④式は等しい。したがってモノアミノ-ジノカルボン酸・塩酸塩の滴定曲線はトリプロトン酸の滴定曲線の式を用いて描くこともできる。   

0.01 mol/Lのグルタミン酸・塩酸塩10 mL0.01 mol/LNaOHで滴定したときのエクセルによる計算結果と滴定曲線を-に示します(pK1=2.16, pK2=4.30, pK3=9.96)。   

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2023-12-24-fig2

<<ジアミノ-モノカルボン酸・2塩酸塩(例:ヒスチジン・2塩酸塩)>>
ジアミノ-モノカルボン酸の一種であるヒスチジンは次のように解離します。   

2023-12-24-figc

Cao mol/Lジアミノ-モノカルボン酸・2塩酸塩(HA2HCl), V mLCbo mol/LNaOH滴定することを考えます(滴下量:T mL)。酸解離定数をK1, K2, K3, 水のイオン積をKwとします(活量補正なし)。関係式は次の通りです。
H3A2+ ⇆ H+ + H2A+
H2A+ ⇆ H+ + HA0
HA0 ⇆ H+ + A-
<平衡定数>
K1 = [H][H2A+]/[H3A2+]
K2 = [H][HA0]/[H2A+]
K3 = [H][A-]/[HA]
<物質バランスと化学種濃度>
Ca = [A-]
[HA0][H2A+][H3A2+]
α = 1+[H]/K3+[H]^2/(K3K2)+[H]^3
/(K3K2K1)
f0 = [A2-]/Ca = 1/α
f1 = [HA-]/Ca = [H]f0/K3
f2 = [H2A0]/Ca = [H]f1/K2
f3 = [H3A+]/Ca = [H]f2/K1
[H] = 10^-pH
[OH] = Kw/[[H]
[Na] = Cb = CboT/(V+T)
[A-] = Caf3 = Caof3V/(V+T)
[HA0] = Caf2 = Caof2V/(V+T)
[H2A+] = Caf1 = Caof1V/(V+T)
[H3A2+] = Caf0 = Caof0V/(V+T)
[Cl] = 2Ca = 2CaoV/(V+T)
 …(HA2HClなので係数2が付く)
<電荷バランス>
[H][Na][H2A+]2[H3A2+] = [OH][A-][Cl]   

ジアミノ-モノカルボン酸・2塩酸塩の場合、滴定曲線の式は、Δ= [H+]-[OH-]として、
T = V(Cao(f0
f22f32)
Δ)/(CboΔ) (*4) …⑤
(*4)  ⑤式は①式の誘導と同様、物質バランスと電荷バランスから誘導できる。
また、トリプロトン酸の滴定曲線の式は、
T = V(Cao(3f0+2f1f2)-Δ)/(CboΔ) …④
で示される(2023-12-10)
f0f1f2f3=1なので、f0f22f32=3f02f1f2
つまり⑤式と④式は等しい。したがってジアミノ-モノカルボン酸・2塩酸塩の滴定曲線はトリプロトン酸の滴定曲線の式を用いて描くこともできる。   

0.01 mol/Lのヒスチジン・2塩酸塩10 mL0.01 mol/LNaOHで滴定したときのエクセルによる計算結果と滴定曲線を-に示します(pK1=1.6, pK2=5.97, pK3=9.28)。   

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2023-12-24-fig3

以上述べたように、モノアミノ-モノカルボン酸・塩酸塩(H2A+Cl-)の滴定曲線はジプロトン酸(H2A)の滴定曲線の式を用いて表すことができ、またモノアミノ-ジノカルボン酸塩酸塩(H3A+Cl-)やジアミノ-モノカルボン酸・2塩酸塩(H3A2+2Cl-)の滴定曲線はトリプロトン酸(H3A)の滴定曲線の式を用いて表すことができます。これは、プロトン(H+)の授受によるプロトン条件をもとに式を考えれば、同一の式となることは明らかです。