二分法およびレビ法を用いて、2種類の酸あるいは塩基を含む溶液の滴定曲線を描き、分別定量が可能かどうか検討します。
二分法による混合酸の滴定曲線
Cao mol/Lの酢酸(HA)とCco mol/Lの塩酸(HCl)を含む溶液V mLをCbo mol/Lの水酸化ナトリウム(NaOH)で滴定する場合を考えます。NaOHの滴下量をT mLとし、また酢酸の酸解離定数をKaとします。関係式は次の通りです。
HA ⇆ H+ + A-
Ka = [H][A]/[HA]
Kw = [H][OH]
[H] = 10^-pH
[OH] = Kw/[H]
[A] = CaoV/(V+T)/(1+[H]/Ka)
[HA] = [H][A]/Ka
[Cl] = CcoV(V+T)
[Na] = CboT/(V+T)
Q = [H]-[OH]+[Na]-[A]-[Cl] = 0
Cao=0.05 mol/Lの酢酸(HA)(pKa=4.6)とCco=0.1
mol/Lの塩酸(HCl)を含む溶液V=10
mLをCbo=0.1 mol/LのNaOHで滴定したとき、二分法(2023-12-03)による計算結果(エクセルシート)の抜粋を図-1に示し、滴定曲線を図-2に示します。
滴定曲線は2段階となり、たとえば電位差滴定法を用いると酢酸と塩酸の分別定量が可能です。第1終点までの滴下量をT1 mL、最初から第2終点までの滴下量をT2
mLとすると、
CboT1 = CcoV
CboT2 = (Cco+Cao)V
が成立します。
したがって、塩酸および酢酸の濃度は、
塩酸: Cco = CboT1/V
酢酸: Cao = Cbo(T2-T1)/V
となります。
二分法による混合塩基の滴定曲線
Cso mol/Lの炭酸ナトリウム(Na2A)とCbo mol/Lの水酸化ナトリウム(NaOH)を含む溶液V mLをCao mol/Lの塩酸(HCl)で滴定する場合を考えます。HClの滴下量をT mLとし、また炭酸の酸解離定数をK1, K2とします。関係式は次の通りです。
H2A ⇆ H+ + HA-
HA- ⇆ H+ + A2-
K1 = [H][HA]/[H2A]
K2 = [H][A]/[HA]
Kw = [H][OH]
[H] = 10^-pH
[OH] = Kw/[H]
[A] = CsoV/(V+T)/(1+[H]/K2+[H]^2/(K2K1))
[HA] = [H][A]/K2
[H2A] = [H][HA]/K1
[Na] = (2Cso+Cbo)V/(V+T)
[Cl]=CaoT/(V+T)
Q = [H]-[OH]+[Na]-2[A]-[HA]-[Cl] = 0
Cso=0.05 mol/Lの炭酸ナトリウム(Na2A)(pK1=6.35, pK2=10.33)とCbo=0.1
mol/Lの水酸化ナトリウム(NaOH)を含む溶液V=10 mLをCao=0.1 mol/LのHClで滴定したとき、二分法による計算結果(エクセルシート)の抜粋および滴定曲線を図-3に示します。
水酸化ナトリウムが中和する点(図中、A点)ではpHの急激な変化はほとんど見られません。次いで炭酸イオン(CO32-)が炭酸水素イオン(HCO3-)に変化する点(B点)で最初の急激なpH変化が見られます。さらに炭酸水素イオンが炭酸(H2CO3(CO2aq))に変化する点(C点)で2番目の急激なpH変化が見られます。最初からB点(第1終点)までの滴下量をT1 mL、最初からC点(第2終点)までの滴下量をT2
mLとすると、
CaoT1 = (Cbo+Cso)V
CaoT2 = (Cbo+2Cso)V
が成立します。したがって、
炭酸ナトリウムおよび水酸化ナトリウムの濃度は、
炭酸ナトリウム: Cso = Cao(T2-T1)/V
水酸化ナトリウム: Cbo = Cao(2T1-T2)/V
となります。
レビ法による混合酸の滴定曲線
Cao mol/Lのリン酸(H3PO4=H3A)とCco mol/Lの塩酸(HCl)を含む溶液V mLをCbo
mol/Lの水酸化ナトリウム(NaOH)で滴定する場合を考えます。NaOHの滴下量をT mLとし、またリン酸の酸解離定数をK1, K2, K3とします。
平衡定数は、次のように表されます。
K1 =[H][H2A]/[H3A]
K2 =[H][HA]/[H2A]
K3 =[H][A]/[HA]
Kw = [H][OH]
物質バランスから、
Ca = [A]+[HA]+[H2A]+[H3A]
= [A](1+[H]/K3+[H]2/(K3K2)+[H]3/(K3K2K1))
= CaoV/(V+T)
Cc = [Cl] = CcoV/(V+T)
Cb = [Na] = CboT/(V+T)
ここで、Ca, Cc, Cbはそれぞれ被滴定溶液中のリン酸、塩酸およびNaOHの全濃度。
被滴定溶液中の化学種濃度は、
[H] = 10^-pH
[OH] = Kw/[H]
[A] = Caof0V/(V+T)
[HA] = Caof1V/(V+T)
[H2A]= Caof2V/(V+T)
[H3A] = Caof3V/(V+T)
[Cl] = CcoV/(V+T)
[Na] = CboT/(V+T)
αを副反応係数、fnをリン酸化学種, HnA (n=0~3)の存在分率とすると、
α = 1+[H]/K3+[H]2/(K3K2)+[H]3/(K3K2K1)として、
f0 = [A]/Ca = 1/α (Hの数は0、電荷は-3)
f1 = [HA]/Ca = [H]/(K3α) (Hの数は1, 電荷は-2)
f2 = [H2A]/Ca =[H]2/(K3K2α) (Hの数は2, 電荷は-1)
f3 = [H3A]/Ca = [H]3/(K3K2K1α) (Hの数は3, 電荷は0)
電荷バランスから、
Q=[H]-[OH]+[Na]-3[A]-2[HA]-[H2A]-[Cl] = 0
Δ = [H]-[OH]とすると、
Δ+CboT/(V+T)-3Caof0V/(V+T)-2Caof1V/(V+T)-Caof2V/(V+T)-CcoV/(V+T)=
0
両辺に(V+T)を掛けて、
Δ(V+T)+CboT-3Caof0V-2Caof1V-Caof2V-CcoV = 0
TとVで整理して、
T(Δ+Cbo)+V(Δ-Cao(3f0+2f1+f2)-Cco) = 0
したがって、
T = V(Cao(3f0+2f1+f2)+Cco-Δ)/(Cbo+Δ)
この式がpHから滴下量(T mL)を求める式となります。
Cao=0.05 mol/LのH3PO4とCco=0.1 mol/LのHClを含む溶液V=10 mLをCbo=0.1 mol/LのNaOHで滴定したとき、レビ法(2023-12-10)による計算結果(エクセルシート)および滴定曲線を図-4に示します(pK1=2.15, pK2=7.20, pK3=12.38)。当量点のpHはソルバーを用いて求めます。
塩酸が中和する点(図中、A点)ではpHの急激な変化は見られません。次いでリン酸(H3PO4)がリン酸二水素イオン(H2PO4-)に変化する点(B点)で最初の急激なpH変化が見られます。さらにリン酸二水素イオンがリン酸一水素イオン(HPO42-)に変化する点(C点)で2番目の急激なpH変化が見られます。リン酸一水素イオンがリン酸イオン(PO43-)に変化する点(D点)ではpHの急激な変化は見られません。
最初からB点(第1終点)までの滴下量をT1 mL、最初からC点(第2終点)までの滴下量をT2
mLとすると、
リン酸:Cao = Cbo(T2-T1)/V
塩酸: Cco = Cbo(2T1-T2)/V
となります。




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