いくつかの滴定を例として、各滴定段階において被滴定溶液中の化学種濃度がどのように変化するかについて調べます。   

<<リン酸の滴定>>
水酸化ナトリウムによるリン酸の滴定について調べます。
試料溶液のリン酸(H3A)のモル濃度をCao mol/L、試料体積をV mLとし、滴定剤の水酸化ナトリウムのモル濃度をCbo mol/L、滴下量をT mLとします。
また、リン酸の酸解離定数をK1, K2, K3, 水のイオン積をKwとします。   

<関係式>
リン酸に関する化学種は、H3PO4, H2PO4, HPO42, PO434種類です。それらの濃度を、[H3A], [H2A], [HA], [A]で表すと、次のような関係式が得られます。
[A] = CaoV/(V+T)/(1
[H]/K3[H]^2/(K3K2)[H]^3/(K3K2K1))
[HA] = [H][A]/K3
[H2A] = [H][HA]/K2
[H3A] = [H][H2A]/K1
   

二分法でリン酸の滴定曲線(2023-12-03)を求める際、二分法表の最後の行は、pHのみならずH+, OH-, Na+, PO43-, HPO42-, H2PO4-, H3PO4の濃度も与えます。したがって、データテーブル機能を用いて、Tの各値に対する[H], [PO4], [HPO4], [H2PO4], [H3PO4]および全リン酸濃度の値を求めることができます。   

<エクセルシート>
0.1 mol/L
リン酸10 mL0.1 mol/LNaOHで滴定したとき、二分法のエクセルシートを-に示します。二分法表の最後の行は、T値に対する各化学種の濃度を与えています。
データテーブル機能を用いてT値を変化させたときの各化学種濃度の値が-のデータテーブルに示されています。   

-
2024-01-14-fig1

<滴定曲線および化学種濃度>
滴定曲線および化学種濃度および対数濃度を-に示します。   

図2
2024-01-14-fig2

-から言えることは、
・滴定開始前:[H2PO4][H+]
・滴定開始から第1中和点まで:
[H3PO4]が減
・第1中和点:[H2PO4]が主成分、[H3PO4][HPO4]
・第1中和点から第2中和点まで:[H2PO4]が減、[HPO4]が増
・第2中和点:[HPO4]が主成分、[H2PO4][PO4]
・第2中和点以降:[HPO4]が減、[PO4]が増
Caは希釈により次第に減少   

<<炭酸ナトリウム+NaOH混合溶液の滴定>>
炭酸ナトリウムと水酸化ナトリウムの混合溶液を塩酸で滴定する場合について調べます。
Cso mol/L
炭酸ナトリウム(Na2A)Cbo mol/L水酸化ナトリウム(NaOH)を含む溶液V mLCao mol/Lの塩酸(HCl)で滴定します。HClの滴下量をT mLとし、また炭酸の酸解離定数をK1, K2とします。関係式は次の通りです。   

<関係式>
H2A ⇆ H+ + HA-
HA- ⇆ H+ + A2-
K1 = [H][HA]/[H2A]
K2 = [H][A]/[HA]
Kw = [H][OH]
[H] = 10^-pH
[OH] = Kw/[[H]
[A] = CsoV/(V+T)/(1
[H]/K2[H]^2/(K2K1))
[HA] = [H][A]/K2
[H2A] = [H][HA]/K1
[Na] = (2Cso+Cbo)V/(V+T)
[Cl]=CaoT/(V+T)
Q = [H]
[OH][Na]2[A][HA][Cl] = 0
Cs = [CO3]
[HCO3][H2CO3]   

<滴定曲線および化学種濃度>
二分法で滴定曲線(2024-01-07)を求める際、二分法表の最後の行は、pHのみならずH+, OH-, Na+, CO32-, HCO3-, H2CO3, Cl-の濃度も与えます。したがって、データテーブル機能を用いて、Tの各値に対する[H], [OH], [Na], [CO3], [HCO3], [H2CO3], [Cl]および全炭酸濃度Csの値を求めることができます。   

Cso=0.05 mol/L炭酸ナトリウム(Na2A)(pK1=6.35, pK2=10.33)Cbo=0.1 mol/L水酸化ナトリウム(NaOH)を含む溶液V=10 mLCao=0.1 mol/LHClで滴定したとき、二分法で求めた滴定曲線、化学種濃度および対数濃度を-に示します。

-
2024-01-14-fig3

-から言えることは、
・滴定開始からA点まで:[CO3]Cs
A点:[CO3]が主成分、[HCO3][OH]
A点からB(1中和点)まで:[CO3]が減、[HCO3]が増
B点:[HCO3]が主成分、[CO3][H2CO3]
B点からC(第2中和点)まで:[CO3]が減、[H2CO3]が増
C点:[H2CO3]が主成分、[HCO3][H]
C点以降:[H2CO3]Cs
Csは希釈により次第に減少